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10 月 1 日: 弓の話を別の角度から

経済効率とエコロジーを天秤にかけると,前者が優先されるというのが資本主義経済 の原則であった.しかし,ハイブリッド車がはじめてその慣例を破った. 価格が多少高くなってもエコロジーを標榜する商品を消費者に選んでもらうこと に,世界の工業製品としてはじめて成功した. トライボロジーとしては冷間始動など境界潤滑領域を拡大する ことになり技術的に困難な問題が増えたが,エコロジーのために多大な努力が 払われた.このハイブリッド技術は概念としてはヨーロッパにおいて長い歴史があっ たが,当該車の成功に欧州各社は追随しなかった.この原因について,私は技術的な 困難があるからだとは思わない.ハイブリッド車は,エコロジーのために搭載する機械部品点数 が大幅に増加した.それがエレガントだと思われなかったのではないか.

効率的な機械の進化のために,機械が複雑化することは,芸術の世界においても事例がある. たとえば,鍵盤楽器の音量を増大させるためにピアノフォルテが発明されたが, 元のチェンバロに対して部品点数が増大し,高まった弦の張力を保持するために鉄骨 の骨組みが必要となった.この進化はエレガントではないかもしれない.

この問題,すなわち楽器音量の増大に対してエレガントな技術革新に成功した事例が ある.それはヴァイオリンだ.会場の皆さんは,ヴィオッティを知っているだろうか? ヴィオッティは,当地トリノ近郊に生まれてトリノ王宮に仕えて,後にパリやロンドンで 活躍したベートーヴェンと同時期の大ヴァイオリニストである.彼の業績は,パリの 弓職人であるフランソワ・トルテとともに弓の近代化を成し遂げたことである.それ までの弓はバロックボウと呼ばれ上に凸の弧を描いていた.それを,下に凸の弧に変 更することにより,重心を弓の毛に近い側に移動させ,運動性を飛躍させ,弦の上か ら叩きつけながら弾く艶やかな奏法を可能とした.これは,トライボロジー的にみる としゅう動面の面圧の上昇による摩擦力の増大による振動エネルギーの増加に他なら ない.この奏法の革命以前に作られた楽器であるストラディヴァリやアマティが,共 鳴を担う本体部分の変更なしに,まさにトライボロジー的な技術革新により,チェン バロからピアノへの変化と同等の進化を成し遂げたのである.この進化のためには材 料の改変を必要としていない.機械部品の一部の設計が変わっただけなのだ.

この事例をヒントに,今後のエコフレンドリーな技術革新について想像したい.すな わち,自動車でいえば機械部品点数を増加させることなく,トライボロジー的にエレ ガントな技法を編み出すことにより,ハイブリッド車を乗り越えることができないだ ろうか,ということである.

ヴァイオリンの”モダン”化って,こうやって落ち着いて考えると凄いことだと思い ませんか.楽器の本体は変わっていないのです.いや,指板は長くなってるしチェロ だと足が生えたりしてますが,胴体は変わっていないでしょう.何が変わったって, 摩擦力と張力なんです.しゅう動材(この場合は毛とガット)でも,潤滑剤(松脂) の 変化でもない.これは,落ち着いて考えて気がついたことです.ちょっとした 研究になります (この話はイタリアのトリノで開催された摩擦の国際会議 WTC2013 における, エコ・トライボロジーのパネルディスカッションでの発言を元にしています. 僕に与えられたテーマは「エコロジー,エコノミー,アート,トライボロジー」 について 3 分で話せ,でした. 万一引用するときは,このサイトの URL を引用してください (笑)).


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7 月 11 日: ペチャブル詩人

5 月 6 月の演奏会や講演会は,無事終わりました. 皆様ありがとうございます. 派生して室内楽に加えていただいたりして,面白かったです.

で,今日は神保町にて鈴木志郎康先生の最新詩集「ペチャブル詩人」を入手.ほや,ほや.

先生は 17 歳から 60 年詩を書いてきたと書かれていますが, 僕もその年頃に志郎康先生のデビュー前の同人誌作品を, 今池のカバラ書店という怪しげな古書店で必死に探していたのを思い出していました. 不思議な時間のたちかたで,極私的というほかない. ちなみに、本書の表題はコンニャクというソフトマテリアルの 緩和現象より採られた模様.素晴らしい.

志郎康先生の新しい本を読むと,古い本を読みなおしたくなります. 前作「声の生地」を読んだときは,「二つの旅」を読みなおしたくなりました. 焦点が一つの円軌道が,焦点二つの楕円軌道になると, その軌道を読み直すように.きっと焦点が無数にある複雑な軌道が,全体なのだろう.

志郎康先生の最新刊が自分にとってリアルタイムになったのは, 1988 年のことで,その少し前の「姉暴き」を谷邊桂子さんと 一緒に読んだのだった.メディア越しにご指導をいただいていた 二人で先生に会いにいったのは,1990 年のことでした.

そういえば,「声の生地」は 2008 年だから,Facebook で 毎日志郎康先生の発言を読むという習慣ができる前のものでした. 今作では,いろんな人の感想が随時表示される.でも,あまり参考になりませんでした. 直接お聞きしたいこともいくつかある.簡単なものでは, 「結局,極私的ラディカリズムなんだ」に載ってた 「「個人映画」の映像表現」を受けて,Youtube についてどう思われているか,とか. でも,ひとにものを尋ねるときには,それなりの心構えというか, 然るべき人であるかどうか,が必要だと思います. ということで,ただムニャムニャと行をたどっていく.それが楽しい.


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5 月 25 日: なんと音楽の講演会

6 月は高分子学会のポリマーフロンティア 21 や名大院での集中講義など, 長丁場のプレゼンが続きますが, もう一つ,こんな講演会を妄想しています.音楽です (笑)

サラリーマン音楽家ハイドンに学ぶ
宮仕えとイノヴェーション

「交響曲の父」ヨーゼフ・ハイドン (1732-1809) は,交響曲のみならず室内楽 や協奏曲においても傑作群を遺し,今日我々がクラシック (古典) 音楽と呼ぶも のの骨格を作った人物である.近年,バリトンという風雅な弦楽器を用いた 100 曲以上もの室内楽作品や,オペラをはじめとする 30 曲以上の舞台音楽が再評価 され,一昔前のクラシックファンが持っていた若干地味な印象が覆されつつある. ハイドンの人生については,エステルハージ侯爵家に仕えていたこと,その後ロ ンドンに渡り後期の有名な交響曲群を作曲したこと,晩年はナポレオン軍侵略の 嵐の中,ウィーンで亡くなったこと,モーツアルトの先輩かつ友人でありベートー ヴェンに作曲を教えたことになっていること,もう一つ付け加えると妻は悪妻で あったこと,くらいしか印象に残っていないだろう.人柄も温厚で,長生きをし, 劇的なエピソードもあまり知られていないハイドンが,なぜクラシック音楽とい う画期的な様式を創造することができたのか,その人生論から答えを導くことは 難しいように思われる.この難題について,企業研究所において物理化学の研究 開発に従事する筆者が,宮仕えとイノヴェーションという観点から考察を行う. 自由な発想,真に文化的な発想は自由業でなければ湧かないのか.そうでなけれ ば,宮仕えというシステムの中でどのようにイノベーションは起こるのか.有名 な交響曲からコンサートではあまり演奏されない作品までを聴きながら,ハイド ンの秘密に迫りたい.

6 月 29 日 (土) 14:00-16:00@ とよたクラシック音楽同好会 です.


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5 月 8 日: ヴォカリーズ(仮)

この間できた曲に,歌詞をつけていただきました!モノトーンの絵が,色彩を帯びたように幸せです.

先に書いた,わしが通奏低音を弦楽四重奏に編曲したバッハの結婚カンタータとともに, 5 月 26 日に 芝山さんのリサイタル @中川文化小劇場で 初演させていただきます.

花 道行き

出発点が映像だったからか,持ち歩いて,いろんな風景と重ねてみると,よく合う. 自分の音楽だから当たり前,というわけではない. 新幹線のプラットフォームから超高層ビルを見上げる,増上寺の祭り, 再選したばかりの参議院議員が実家の大掃除してる,家でパスタをゆでる... 全部,はかなく,ちょっと幸福になるんですが.


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4 月 15 日: 多崎つくる

村上春樹の新作の主人公が,「千種高校(名古屋の郊外の進学校で ラグビーがさかん)→東工大」出だそうで, そんなマイナーな経歴の人は,わし自身を含めて数十人しかいないので, ちょっと読みたくなりました.

これまで彼の作品には全く興味がわかなかったです. 出てくる人たちがナルシストばかりだし,文体が生理的に合わないので. でも,彼の生活スタイルは良いなあと思います. エーゲ海が見えるギリシアの別荘に何ヶ月も住んだり.

で,読んでみたのですが, ここに出てくる登場人物の全員,千種の実在の誰かと誰かの組み合わせとして 妄想することができました. 名古屋という社会,東工大っぽい人の感じ,そこそこリアルです. でもまあ,この本はまぁ,僕らをモチーフにしていはいるけど, 基本は村上春樹的人物像を描いてる,村上春樹的ストーリーだと思います. 悪い作品ではないけど,たとえば, インディアンの生活を妄想してる白人作家の小説のように, 実在の僕らには何の意味も感じませんでした.



(追記: ググってこのページを見に来る人がやたらいます. ネットを散見すると高校のモデルが瑞陵だと言ってる人がいるけど,全然わかってない. 「ラグビーがとくに強いわけではなかった」と書いてあることを千種でない根拠にしている 人がいるが,奨学金で全国から集める私学には負ける,と書いてあり,強くないというのは全国レベルの話. また,千種生が東京志向だから違うという意見については, この 5 人の仲がとくに良かったから主人公以外は学校のレベルをあえて落として 名古屋に残った,という記述がある. ちなみに,わしの当時は「関東志向」,「関西志向」,「名古屋土着+他地方や地方医学部」が ほぼ 1:1:2 の割合でおり,決して東京志向だけではない. 「東大に余裕でうかるがあえて名大」というアカのような存在がいるのは, 県内トップの高校しかない.市内 6 位で東大+東工大が 0〜2 名の瑞陵では有り得ない. それだと多崎も優等生として目だってしまう.彼はあくまでも "中の上" なのだ. 東工大をそのために使った,いやらしい設定だ. ただし,主人公はわしより 3-5 歳若くて, その頃は群制度が変わり千種はトップじゃなくなる頃だった. だから,このポジションの高校は厳密には存在せず,一番近いモデルが 旧群制度の千種だということだ. ともかく,ラグビーの話にしても,主人公が東工大に入るため「生まれてはじめて真剣に」勉強した, といった言い方にしても,要は "うすらでかい" 地方のエリートのスノッブな「上から目線」で 全体が描かれている.これが判らないと,主人公に「色彩がない」という妙な話が 理解できない.それにしても, それにしてもですよ, こんなことをクダクダ考えてる還暦の小説家というのも,いったい...)

(2017年5月7日追記) ふとネットを見てたら,本書の前身について素晴らしい考察を書かれている方がいました. 【ありがとう、そして、さようなら村上春樹】『地球のはぐれ方』(文春文庫) 村上春樹の「名古屋disり」,その通りだと思います.


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3 月 17 日: 手作り

全部,手作り.ときどき忘れそうになりますが,世の中にあるものは,大自然の 営み以外は全部人が作ったもの.本業の分子シミュレーションのプログラムは全 部手作り.音楽も全部手作り.久しぶりに,手作りに慣れていないかもしれない 人と音楽するのですが,大丈夫かな,と思いつつ手作り.

バッハのカンタータ BWV202 を室内楽にアレンジしているのですが,Finale2012 の高速ステップ入力は,良いなぁ.鍵盤とテンキーつきのPCキーボードの組み合 わせで,サクサク入力できる.レシタティーヴォ一曲で30分弱で編曲できる.ア リアはもうちょい.楽譜の画像読み込みがいまいちで,手入力が意外に速い.ア イディアを必要とする部分に最も時間をかけられる作業が,良い作業だと思うの です.これまで,この手の入力って,MIDI のリアルタイム入力でクオンタイズ かけたりしてたけど,断然こっちのほうがキビキビしてる.TeX で数式入力する ような感じ.いざとなったら,写譜屋さんに転職できるかも!?なわけないか.

勢いで,ソプラノとオーボエと弦楽四重奏,の小品を作りはじめました.


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