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.Lastupdate: Thu Apr 24 07:38:26 2025.


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4 月 24 日: 我々はデータ小作人

テクノ封建制,ヤニス・バルファキス 著,斎藤幸平 解説,関 美和 翻訳,集英社(2025)を読んだ.

経済とかビジネスの本って,ほとんど読まないし, まして他人に推薦はほぼしないのですが,自動車会社に就職する直前に読んだ ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則, ジム・コリンズ、ジェリー・ポラス 著、山岡洋一 訳, 日経 BP(1995) 以来,他人に推薦できる本です.

GAFAM が封建領主だとすると,トヨタはテスラと一緒で封建陪臣の立場で,僕が「会社」としてイメージするのは,っとすると日本国民と異なり国民の休日のなくなったT公国民のシステムなのですが.

この公国は,まあまあ「うまくいってる」ように感じる.「自動車絶望工場」(by鎌田慧→もう知らん人もいるのでは)なのかと言われたら,結構そのイメージは違うように感じる.ラインに立ってないからなのかもしれませんが.

愛知県全体で,自動車共産主義みたいな状態になっている.もりころパーク(もうないけど)や春日井のウォータースライダーに相当するものを関西圏で楽しもうとすると,5倍くらい取られる.中学卒業するまで医療費は無料だった.何より住宅が関東や関西に比べて安い.有休消化率は,最後に見たデータではグループ企業で一番悪い J 社(笑)でも80%くらい.他はほぼ 100 %.健康診断ではCTスキャンが自動的についてくる.愛知県民あるいはT公国民は,どの程度この状況を客観視できてるか知りませんが.

さて,上記のバルファキスさんの描く「革命後」の社会なのですが.

僕は経済学を一度もちゃんと勉強していないのでアレですが,経済学ってマクロ経済とミクロ経済があるのでしょう.この人の議論って,全部を統合して議論しようとしてるので,自然科学者だったら「無理」って判断する話になってる.ミクロな系とマクロな系の支配方程式が違うから.その辺,どうなってるんだろう.

で,ミクロ経済しか多分想像できないので,以下は直観的に思うのですが.僕は掃除人や引っ越し屋といったエッセンシャルワーク(アンチ bull shit job) を20代で 10 年間経験してから,今はテックユニコーン企業(笑)の CTO もやってるので,なかなかのキャリアだと思うので,言えます.「基本給の部分を従業員全員で平等に分ける」ところまではアグリーです.が,ボーナスの分け方,というのが,絶望的にダメなんじゃないか?

「投票で決める」ということですが,たとえば今の大学院.大学院は,やっぱ学生を育てる機関であるのが第一なので,当然,学生の集客力が営業売り上げみたいなものに直結するわけです.ですが,ボーナスを「投票で決め」たら,多分,同僚に嫌われてる僕みたいな人は,どれだけ学生を集めても給料が上がることはないでしょう.

また,同僚の教員は投票に際して,まだなにがしかの判断ができるけど,掃除の人とか守衛さんとかは,判断できないのではないか.bull shit job の本で議論されてることとの整合性を取ることが絶対必要な気がする.

病院なら医師だの看護師だの臨床検査技師だの薬剤師だのが,軸受会社だったら軸受を設計開発する人が,レストランだったらシェフやソムリエが,といった感じで,その事業所で主となる何らかの専門職がそれぞれあるわけで,そこを横串で評価できるのかな,というのが一番違和感のあるところ.学歴を積む,専門性を高める努力をする,モチベーションをどこから担保するのかがわからなくなる.

もう一つは,この著者も技術革新の継続は必要だとは言ってるんですが,企業で新製品を開発するときに,コア技術を提示して社内で仲間を募集するって言ってます.技術者なら判ると思うけど,これでうまく行く技術って,3割くらいの分野?「スモールサイエンス」という言い方があるが,それが可能な領域.ハックして提案できる情報系の技術の多くはこれで大丈夫かもしれない.けど,「70人乗りのリージョナルジェット旅客機を開発します」とか,どうやってやるのかな.

T公国の中では,たとえば,技術革新の継続的な生成の方法については,結構頑張って構築してきた,と思うのですね.そのことと,現状の資本主義とはマッチした.愛知県は,余剰の資本を地方公共団体だの周辺にばらまくことによって,共産主義的なアイディアの良いところは既に取り込んでいる.やっぱ言われてるようにモノリシックな経済圏だから実現してるんだと思う.

っと,T公国万歳の「名古屋ドメ」的な視点から批判的にこの話を読んでいると(「日本はオワコン」ってバルファキスさんはモロに書いてるから,そこも楽しんで欲しい),じゃあ,テクノ農奴として位置づけられた我々に「革命」が到達して,どうメリットがあるのか,「うれしさ」を教えて欲しいということになる.

その際に,ちょっと心配気味に思い出すのが,チェ・ゲバラの日記.キューバ革命って本当に10人くらいで実現したんですよね.すごく興奮気味に書いてあるし,読んだ若い頃の僕はもっと興奮した.掃除夫とかしてたので.

ただ,俯瞰して歴史的にみたら,共産主義革命の中では,ポルポト,スターリン,毛沢東とかと並べてカストロを考えたら,どうも,それほど悪い革命ではないように思う.音楽とか聴いてたら,ショスタコの交響曲と「ブエナビスタソーシャル...」との違いがあるくらい.でも,当時の「大人」たちは,随分と困ったんじゃないかなあ.

ここを突っ込まれるのが心配なので,著者はものすごく慎重に,左翼というものの本質は違うんだ,と本書の前半を通して語っているのですが,ちょっとまだ,若い頃にできた傷のかさぶたが取れてない感じがする.あくまでも感じですが.


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4 月 21 日: 転職とか昇進(独立)の挨拶

は,必要だと思います.

なんか知らんけど,そういうことをしない人が年々増えています. なんだろう.栄転を威張ってるみたいで,世の中に対してそっとして おこうという気遣いか何かなのかしらん. 人事が確定するまでは,公表しないのは常識です. 事前に連絡・相談すべき人を厳選するのも常識です. が,実際に転職とか独立とかした後だったら, 連絡したらどうかと思うのです.

こういう情報をキャッチすることにあざとい人と,そうでない人がいます. わしは,チャキチャキしているように見えて,そういうことに鈍感です. たとえば,共同研究している東京の大手私大の教授が, 某北の方の旧帝大に移られた,のを知りませんでした(笑). 学生が教えてくれた.これから論文を出すというのに...

わしが思うに.プラクティカルに,連絡先を教えてくれないと 困るじゃん,というのがあります. 上の件でも,たまたま連絡をとろうと思わなかったので大丈夫でしたが.

あと,最近は,「本当に偉い人」という自覚を持ってる人が 大変少なくなっているのではないかと思います. 要は,このポストに就いたら学術界をリードするのは自分だ,という自覚. いえ,ちゃんとしたポストなんだったら,そういう自覚をちょっとは 持っていただかないとって思うのです.

あとは,単純に目出度いことなので,別ルートで聞くのは不愉快です. まあ,自分ごときに連絡してこないのは当然だわな,って関係だったらともかく, 最近は,学生時代からその人のことを知ってるよって関係も結構あるわけです. だったら,こちらは単純にお祝いしたいじゃん.それをさせないって, なんだかなあと.

自分でも,9年前に転職したときは 300 件くらいメールを出しました. まあ,葉書を出すような時代でもないしな,っと. そしたら,大体の方々は,今までお疲れさん,良かったね, 頑張ってね,っ的なお言葉をくださいました.

ビックリするようなコメントは 2 件だけでした. 1 件は,会社の人事の方で「未提出の書類があるので出すように」とだけ 書かれていた件. 2 件目は,「あの駅前に神戸大があるのは知ってるが,兵庫県大なるものが あるのは知りません」っていうお言葉.いや,そう思ったとしても, 普通は書かないと思うのですが(笑).

逆にいうと,メールを出しても 1 % 未満しか,ギョっとする返事は来ませんので, 普通に出したら良いじゃんって思う次第.


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4 月 19 日: X をやらない理由

最近,博士院生が X でこんな話題があるって話をしていました. JST の博士用のプログラムのイベントに出なかったらプログラムを 首になったどころか大学自体がクビになったとか何とか. まあ僕も院生の頃は孤独だったので,そういうネットを良く見ていました.

けど,あれって見ててもあまり意味がない.(アカデミアっぽい)世の中に対して文句を言ってる人って,圧倒的に文系・生物系・物理系が多くて,(アカデミア的な意味で)リア充なトライボロジストみたいな人はほとんど発言していないから,毒される.理学系の文化を浴び続けて,企業研究所に入ったら全く別世界で(もちろん企業研究所はアカデミアともちょっと違うけど),拍子抜けしたのを思い出す.親戚は医者ばかりなので,またそれは別世界だと感じる.普通は,そっちとこっちを出たり入ったりしないので,バイアスのかかったまま一生を終える.でもそれって,世の中をすべて理解したいという学問の基本的な姿勢からすると極めて問題な筈なのだけど.

で,久しぶりにいろいろ眺めてたら,今の話題はハーバード大学から政府が3000なん百億円の資金を引き揚げるって.ポリコレ的な問題で.そうなんですか... これも,科研費全体で2000何百億円と比較してぶっ飛んでるって話を書いてる人がいて,確かになと思ったんですが(ちなみに世界上位の企業の研究費は一社で1兆円超えてますが).

まあでも,落ち着いて考えると,自分にとっては,どうでもいい話題かも.誰かが,阪大とハーバードが合体したら東大に勝てるって話をしてましたが,それを実現するタイミングかもしれませんが(笑)

本業(化学なら化学の研究)をちゃんとやってるよと.余った時間を何に使うか,というときに,ハーバード大学がどうって「大変有名な話題」にシンクロすることよりも,たとえば,昨日の夜は息子とコンスタンチノープルの陥落について語り合ってたのですが,もっと,そういう自分の頭にとって大事な話をした方が,自分らしさを成就できる気がするのです.

マスコミ的な仕事(僕が半年弱やってた理工系出版社とか)に生きてたらそれも大事で,たとえばサイエンスライターさんとかのXを見てると,確かに面白いですが.でも,僕の場合は,自分の魂のオリジナリティの方が大事だなと,しみじみ思った次第.炎上するのが怖いとかもありますが,今回は,もっとしみじみとそう思った次第.

あと,学振と JST SPRING の違いですが,Xを見ると外国人が4割とってて,その大半が中国人ってことが問題になってるようでした.まあでもこれって,日本人が博士課程にあがらないこと自体が問題としか言いようがないような.

もっと大事な学振とJSTの違いを言います.学振は,まあ科研費の審査みたいに全国の先生方にも回ってくる,全体的な話です.JST は大学に個別に来ます.どうなるかというと,JST の方は東大京大に不利になります.学振は,ぶっちゃけ「いけてる先生の子分のいけてるテーマ」が当選しがちになります.だから,東大京大のいけてる研究室に所属してたら当選確率がドンと上がる.

院生の頃の僕は,一応東大でしたがイケてない研究室だったので,学振なんて,まず当たらない.一方,高専の助手のポストなど,地方人が有利なシステムが当時からもあった.ので,地方人のことも,あいつら良いよなあ,都で勉強してないのにアカポスに就けてって,正直うらやましかった.

ということで,今の僕の立場としては,地方人のボスの側になったということで,JST はありがたいと思うわけです.真面目に言うと,「いけてる先生の子分のいけてるテーマ」は,確かにアカデミアの中だけで見たらキラキラしていて大事ですが,もうちょっと広げて考えると,キラキラばかり見てる人たちには見えない視点もあります.僕がここ10年苦労している「流体とブラウン運動の連成」なんて,企業人なら一瞬でわかってくれるけど大学人にはサッパリなテーマです.そういうことを,地方のイケてない研究室ではやってるわけで,そこにも,ある程度の,主要ではないけど博士院生が食える程度のお金が来ても,長期的に見たらバチが当たらないと思いますよ.そういうことです.

僕自身は,研究室を立ち上げてからは,そういう地方人の苦労をしたくなかったから(爆),基本的には「企業の下請け」をずっとしてきました.だって,企業が1000万くれたら,東南アジアの東大生みたいな人をポスドクとして雇って,世界的に見たら日本の中央なんてどうでもいい研究展開をできますので.基本はそこで,今の職場の院生が聞いてるよりはるかに優秀だったのはサプライズ.で,物理や化学の学会の偉い先生が何を考えてるかなんて,どうでも良いって暮らしを続けられました.これは企業研究所にいたときと変わらないスタンス.

でも,そうこうしているうちに,中央の先生とも,次々とお友達になってしまって,そうすると,ああ,あっこは学振をガンガン取ってるなあって,東大の中にいたときの昔の感情みたいなものを思い出してしまって,頭の整理をしなきゃいけなくなった→イマココ.


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4 月 6 日: 大学ベンチャー周辺の鼻息の荒さ

コオロギ食、コンビニ全国展開目前で挫折 無印良品で話題も陰謀論で炎上」 という記事で,
>私は、日本で大学発のスタートアップが増えない現状に課題を感じています。大学の研究者は論文の数で評価され、スタートアップを経営しても評価は変わりません。このため起業する研究者はなかなか増えません。

というご意見がありました. でも,大学ベンチャーを作ることは,研究教育業績じゃないんだから,大学からの高い評価なんて要らないと思います.スタッフや大学院生に給料を払うことが可能になり,自分もボーナス1回~数回分,増えてくんだから,それで良いじゃないと思います. 2024 年 8 月 31 日: 実務家教員 で述べたように, アカデミアの評価はあくまでも学問で行うべきです. そうしないと,お金を引っ張ってきたから何ちゃらラボのボスに据える,みたいな スキャンダルになりかねません.

この方は若手だから,そういう風に思うのかもしれませんが.

オッサン的には,大学から褒めてもらいたいと思うのは,我々が「上納金」を毎年キッチリ納めていること.他人からお金をもらったら,ありがとうと言って欲しいです(笑).どなたも仰いません.利益をあげてるのは当社だけだそうですが.

で,思ったのですが.大学ベンチャーのイメージとか,関係人物の皆さんの,鼻息が荒すぎるんですよ.

これって,「乳を搾る」ようなものだと思います.本来だったら,子牛が産まれたら自然に乳は出てくるもので,自然に任せたら良いのです.が,どっかに一頭,巨大乳の牛がいたからか知らんけど,凄い勢いで搾ろうとする人々が現れた.母牛の方でも,あいつみたいに凄い勢いで乳を出すぞって人が現れた.

本来だったら,金なんて借りなくて起業できる程度で良いのです.SOHO って忘れたの?皆さんが,ちょっとずつ,出来る範囲で,技術の社会実装を行っていけば,その中から驚くようなイノベーションが生まれてくるかもしれないという程度のこと.当社みたいにビジネスとして最初の瞬間から成り立っていたら,それで世間の役に立ててるんだから,それで良いではないか.何故,そう考えない?

VC の方はそれはそれで,一銭も利益を生み出してない会社にばかり投資しようとするし.詐欺師の馬鹿しあいみたな状況をなんとかして欲しいです.これには理由があって,日本の分子生物学が恐ろしいほどの権威主義 (アカデミックですらない. 日本分子生物学会の理事名簿を見たらわかります) なので,実際に役に立ちそうな大学ベンチャーを支援せずに, 旧帝大のいかにもな人にしか投資しないからです. この方法だと,ただただ税金を溶かすだけです. 生物学以外の理工系では,そんな可笑しい状況ではないのですが, 大学ベンチャーの多くが生物系です.

ということで,そういう人々とは関わらずに,心穏やかに生きていけば良いではないかと. 昨今は,大学が起業の邪魔をしないようにはなりつつある.また,ちょっとした手助けが動き始めている.それで良いではないか.

この人は「敗軍」になったけど,僕は負けてない.本日述べたような論はどこにもなくて,負けてない人に話を聞きに来る人も誰もいない.


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3 月 20 日: コンプリートすること

スポクラの守口店に行きました.ここは建物が全体的にオシャレ.安藤忠雄系.丸太町店も建物がかっこいいけど,方向性が異なる.プールも2階まで吹き抜けてる上に三角屋根.

どこに行っても,よほど混んでない限りメニューは大して変わらないのですが(50m ずつに切ってるから,混み具合によってロバストにこっちが内容を変化させてる),新しいところに来たら,最後のダウンで,背面でブレストのキックで,要はあおむけの蛙状態で天井を眺めるのを趣味にしています.ここは,全国指折りの良い感じ.ちなみに,ポートアイランドスポーツセンターの50mプールも良い感じ.川重カラーの黄緑になってる(笑).ここは三角屋根の中央から空が見える.

兵庫県は,かなり頑張って,残るのはジェームス山,川西,三田の3店.京都は意外にコンプリートしてて(少ないから),あとは伏見と八幡.大阪は,都心部はほぼ制覇したんですが,郊外は行ったのが岸和田東くらいか.今日は定番の西北が定休日で,三宮に行くのも何だし,守口は家から近くてキッズとも被らないので行きました.

いえ,先日の九州出張には博士院生の一人といったんですが,福岡県は2店舗で半分行ったので,あとは大野城と北九州だといったら,「僕ならコンプリートを目指します」という.私の思想を,わかってない.コンプリートが優先なんじゃないんだ.あくまで,普通に生活してて,たまたま制覇した,という状態が好きなんだ.

よくマイルをためるために修行するという方がいて,その Youtube とかを見るのも好きですが,自分では絶対にやりません.やっぱ人生の目的は「知の巨人 笑」になることであって,その道すがら,たまたまたスポクラをコンプリートしちゃったとか,ステータスがダイヤになったとか,そう言いたい.

こういうこと考えるとき,北村透谷とか石川啄木の人生について考えるのです.25歳とかで死んでるけど,圧倒的な存在感がありますやん.絶対,彼らは何かをコンプリートしたことなんてない.世の中の全部を見てない.見てないけど,本質をつかまえて,それを表現して,決定的な役割を果たした.


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3 月 17 日: 起業する際に

お蔭様で,立ち上げた会社は初年度から 3 期連続黒字です. で,本当に小さい事業ですが,会社経営についてつらつら考えることがあります. まず,大学教員でベンチャーを作ってる人って大変少ないので, 相談相手がいません.大学の研究室の運営について,だったら皆さんと 普段の会話がありますが,ベンチャーはちょっと違うので,特有の悩みを 相談できません. 2024 年 12 月 30 日: 御礼 の中ほど書いたように,うちの会社には「福利厚生」があります. 素晴らしいことなのですが,偶然ネットで見つけました.誰にも相談せず,自分で決断して, 事務の人にお願いしてサービス開始しました. 実は,事務の人,というより経営の片腕様なので,この方=社員には相談しているのですが.

ところで,起業家の女性がセクハラにあう,という記事を Yahoo! ニュースで見たのですが, コメント欄に,「エンゼル投資家」などというものと関わるのがいけない,などなど, いろいろなことが書いてあって,参考になると思いました.

僕も自分のお金100%で起業しましたよ.普通はそうすべき.セクハラは論外だけど,「起業業界」なんかと関わるのがいけない.誰にも相談できない,のが正しいと改めて思った.

起業系のイベントというのがあって,僕もたまに誘われるのですが,一度も出たことがありません.ああいうのに「出させてもらう」というのが,既にカモられる第一歩というか,ネタにされる第一歩というか.何のネタかというと,なんの役にも立たないイベント業というのが世の中には結構あって,そのネタになるということ.自分のビジネスの実体とはリンクしない.

普段,将来の顧客の皆様と出会う主たるイベントである「学会」は出ますけど,それ以外の,商工会議所のイベントとか,高専の技術センターのイベントとか,メーカー内部のセミナーとか,O さんが誘ってくれた技術士の会とか,T さんが誘ってくれた考古学者の会とか,そういうアウェイっぽい会くらいには出ます.

でも,そういう会って,必ず「呼ばれて出る」状態で参加します.「呼ばれて出る」のと「出させてもらう」のは,だいぶ違います.「大学見本市」がそのボーダーくらいで,オンラインの奴に頼まれて出させてもらった,けど全く何の意味もなかった.オンサイトのときは良いという話も聞きますが.

こういうことを最初何で学んだんだろうと思いだすに,20代前半,チェロとアコーディオンのユニットをやってるときに,ストリート系音楽のイベントに,半分サクラみたいな形で出させてもらった,ときです.コンテストみたいな形式になってて,本気で「出させてもらってる」という参加者もいるわけです.あー,こういうのは二度と出てはいかんな,っと思いました.普通にストリートで演奏する方が楽しいし,金になるかどうかは場合によるが,正しい.音楽をやるって,すごく人生の勉強になる.

起業系イベントで,コンテストみたいな形式のがありますやん.ああいうのって,意味があるのでしょうか.申し訳ないが本気でわかりません.


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3 月 2 日: イギリス兵のように生きてきた

ここ数か月で,生活の上で大きく変わったことは, 2024 年 12 月 30 日: 御礼2024 年 10 月 16 日: ひたすらロング に書いたように,毎日水泳をするようになったこと. 1 年と数か月で変わったことは, 2023 年 9 月 5 日: さらば新幹線 に書いたように, 移動手段として新幹線を捨てて飛行機に変わったことです.

そちらの記事には書かなかったのですが, 毎日水泳をする,というのは大変リスキーなことです. 何にとってリスキーなのか,というと,一言でいうと「出世」です.

前職の研究所にいるときは,近所に口論義公園という素晴らしい室内 50 m プールがあって, 毎日,泳ぎに行こうと思えば行けました.裁量労働制になったら,余計に状況としては 良かったのですが,行ってませんでした.そのときは,職場にパートさんとか派遣社員さんとか, 非正規の方が沢山おられたので,正社員があまり怠けていると示しがつかない. 僕は 20 代の頃はずっと自分自身が非正規のフリーターだったので, 正社員が怠けるとやる気がなくなるのを肌感覚として理解していました. 口論義公園には毎日は行かなかったのですが, 前職で単身赴任の週末婚をしていた最初の 5 年弱の間は, 仕事が終わった後は藤が丘のスポクラで月曜から木曜まで,毎日夜に泳いでました. 週末は東京の家で過ごして,月曜日に朝イチの新幹線で名古屋にいって, 金曜日に東京に帰る,という間の日の夜は単身で暇なので,泳いでました.

大学に移ってからは,仕事が終わった後にポートアイランドの神戸市スポーツセンターで 泳ぐことが,週に 0~2 回くらいありました.公営のプールは午後からしか やっていないのと,夕食を作る担当なので,早めに仕事を切り上げられる夕方しか 泳げなかったから,必然的に週に 0~2 回になっていたわけです. ちなみに,水泳では痩せません,というのは,週に 0~2 回程度しか 泳がない場合のことです.毎日泳いでいたら痩せます. というか,お腹の脂肪が取れた上で肩が張った,水泳部体型になります.

つまり,現役の労働者が毎日泳ぐ,ということは,午前も泳ぐ,あるいは,出張先でも泳ぐ,ということです. かなり,泳ぐ時間を能動的に捻出する,ということです. 一回の時間は,2km ほどで 45 分くらい.着替えやシャワーを入れても 1 時間ちょい. 仕事場まで行く乗り換え駅で行くので,その意味でも, 大した時間のロスではないのですが,まあまあです.

ちなみに,今の職場の部屋には秘書さんがおられるのですが, 大学業界はブラックなので⇒土日に仕事が入ることもザラだし,自宅でかなり作業しているし, ということで,以前の正社員と非正規が云々という話は,免除していただくことにしました.

単身赴任時の夜間に泳ぐことや,週に 0~2 回泳ぐことは,まだ何というか 「健康維持」の範囲でした.他に運動とかしませんし. でも,毎日泳ぐことは,明らかに「贅沢」です.

もう一つ,贅沢をしています.それは,出張の行き帰りに伊丹空港を通る際に, 時間があったら, 大阪エアポートワイナリー に寄ることです.ラウンジにも寄るのですが,ラウンジは仕事ができる場所です. 論文の査読レポートを書くくらいの作業ができます. ワイナリーは,一人でワインを呑みます. これは,自分にとっては画期的な贅沢です. すごく悩みました.プライオリティパスのレストラン特典が 楽天プレミアムカードからなくなって, さらに,ANA VISAプラチナ スーパーフライヤーズ プレミアムカードという 年会費 8.8 万のカードに切り替えてもレストラン特典がなくなって, さらに別のカードにしてまで,この贅沢を追求しています.

そのとき,ふと思ったのです. これまでは,イギリス兵のように生きてきたな,と. 19 世紀に世界を支配したのは大英帝国です.パックス・ブリタニカ. その原動力となったのは,俗説かもしれませんが, イギリス兵はまずい飯でも戦うけど,フランス兵は食事が大事,という話です. フランスがロシア侵略で失敗したのは,飯を調達できなかったからだ,という話. 一方で,イギリス兵はオーストラリアやカナダやさておき, インドやアフリカの奥地でも働いている.正しいかどうかとかは知りませんが.

確かに,これまで一人でいるときに,フランス料理はおろか, 飲み屋で一人呑みすることすら,ほぼ,ありませんでした. 牛丼とかラーメンとか,そんなんばっか. (参考 2000 年 2月25日: 鰯でいいやんか 若い頃に既に書いてる.「どっちみち, 驚くような発見は自分で しなければならないのです. 驚くような人や物事と出会ったとしても, そのことに驚くのは自分の感性なんですから. 」). 二人以上のときは別ですよ.美味しい店を探してはいることは多いです. これは,一人と二人以上だと,全く食べる意味が違うからです.

「自分へのご褒美」という概念がなかった. それはすなわち,オンとオフという概念がない,ということです. あらゆる局面において,知の消費者になることを恐れて, 知の生産者たろうとしていた. そして,なんだかんだ言って「知の巨人(笑)」になりたかったのだと思いました (参考 2021 年 6 月 23: ニューエイジ時代の「知の巨人」立花隆氏.RIP). 科学者として通常の仕事をする以上に,作曲をして,詩を書いて,評論をして,という感じです. 作曲家としてはアイヴスやボロディンのように生きたいし, 詩人が他の職業を表面上持っているのは通常のことです.

もうちょっと俗な言い方をすると,「出世を諦めていない」という言い方だったら 伝わりやすいかも.だって,毎日プールに行ってたせいで, あるいはワインを呑みすぎたせいで, 研究員から主任研究員に,あるいは准教授から教授にあがれなかったとか, 思ってしまうのは嫌じゃないですか. 他人とワインを呑むのは,視野を広げるという意味で,意味がありますが, 一人で呑むのは,単なる贅沢です.酒が好きなら家で安い缶チューハイを呑めば宜しい.

ということで,判りやすい言い方でいうと,定年まであと 11 年ですが, まあ,K 大や H 大から呼ばれたり,学術界の偉い役職に就いてくれと言われたら, 別にやりますが,積極的にイギリス兵のように生きるのは,そろそろやめようかな,っと 思ったわけです. そんなことよりメタフィジカルに言うと, 余裕を持って,まだ曲が書けたら,詩が書けたら,書こうかなと思っている次第.

この年になるまで「緊張」していた,ということかと思います. 研究者の人には多いと思います.別に,そういう緊張をしていなくても, 良い業績を出す人は多分沢山います.なので,自分が必死だ,ってだけなのだと 思うのですが,これはちょっと記録するに値するかなと思った次第です. やっぱ,怠けてて知的生産ができるわけないじゃないですかと. 若い人が読んでるみたいなので(笑),それくらい緊張感を持って生きろよ, って偉そうに言いたいということです.


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1 月 26 日: 神戸と兵庫県

今年も宜しくお願い申し上げます.

ところで,兵庫県民の自己評価,というのも,ここ数年の僕の研究テーマです.

実態以上に外部評価が低い名古屋にかかわってきたせいか,実態以上に外部評価の高い神戸について,老婆のような心でじっとり眺めています.でも,神戸人って自己評価が思ったより高くない.

関東人に対しては,神奈川県との比較をすると,とても分かりやすい.神戸って広大な神奈川県が半径20kmくらいにギュっと詰まってる素敵で便利な街なのです.山下公園や中華街,みなとみらいに相当するものが三宮周辺に全部ある.横浜からみたらはるかに遠い箱根の温泉が,裏山の有馬温泉としてある.同じく遠い丹沢が裏山の六甲山.材木座や稲村ケ崎に相当する海岸が,市内の須磨にある.100kmも先の伊豆半島に相当する淡路島が,市内から出てる橋の向こう側にある.「伊東に行くならハトヤ」と「ホテルニュー淡路」の歌がそっくりでしょう.

こういう説明をしたら,すごくコンパクトに名所がまとまってると理解できるはずなのですが,こういう説明を見たことがない.

兵庫県全体に広げても一緒で,兵庫県は
1. 和牛の起源(六甲山の水が良質だったので,神戸港に外国船が沢山来た.欧米人が牛を要求したのが黒毛和牛の97%を占める但馬牛ブランドのはじまり.)
2. 日本酒の起源(播磨風土記に日本酒誕生の記載あり.1600年代に伊丹の鴻池が清酒の製造法を考案,灘と伏見の酒が国内を席捲.1920年代に兵庫県農業試験場で日本酒米の6割を占める山田錦を発明.)
3. 日本の起源(720年代に書かれた古事記・日本書紀に記載あり.)
4. 世界遺産・姫路城
なので,「肉と酒(魚もうまい)」があれば,観光には十分ではないかと思うのです.が,こうやって正面から兵庫県は日本一だという言い方をする人に出会ったことがない.まあ,自他ともに肯定感の最強っぽい京都人が身近にいるのがいけないのだろうか.


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