2004年のWhat's New!


最新のWhat's New
ここからしか飛べない過去のページもあるよ.


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12 月 23 日: 音源

クリスマスのおすそわけに.
神様だけが知っている (mp3, 3.4 Mbyte, チェロ 2 重奏版). 
ボロい方の楽器で急遽作ったデモ録音ですが, チェロのデュオでこういう軽いレパートリの 需要があるかもしれないと伺いましたので置いておきます. 一応, 楽譜もあります (無料).

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12 月 13 日: 楽器

チェロ: Paolo Traversi 2003 (Giorgio Grisales 工房)
弓: G.A.Paulus***

長くなったので続き


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11 月 23 日: ライブ

今日は久しぶりにライブに参加させてもらいました. 昔は, この裏の建物で楽器弾いてたなあと思いながら愉快でした.

対バン?の方々が, 沖縄の三線, モンゴルの馬頭琴, 韓国の太鼓, の皆さんで, つい最近, 当ページの 訪問者の部屋に馬頭琴の方がお越しくださいまして, 同じ方かと思ったくらい, 今週は馬頭琴づいていました. スーホの白い馬が枕もとで何か囁いていた. ホーミーというのもはじめて生で聞きました. 伺ったところ, やはり, 馬が疾駆する音楽というものがあるのだそうです.

ライブ楽しいのです.
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11 月 6 日: 新約聖書

サーバを新しいサービスに変えたので, 多少ディスクのスペースが広くなって 音源を置けるようになったはず. といいつつも, 置くに相応しいものについて逡巡している次第. PC への入り口の一つとして, ROLAND (EDIROL) の UA3-FX を大人買いする. Martha Argerich の, 仲間の録音というのが聞けるんだなあ. なんという世の中だろうか. ついでに, いくつかのネット上のラジオを聞いてみる. 昔, (今もあるのかしらん)「短波」という雑誌があって, BCL という文化があって, 世界の裏側に人がいた. 結局, 当時の自分の技術と予算ではバチカン放送は聞けなかったのだけれども, 今ではラトヴィアの放送も聞こえる.

サーバを新しいサービスに変えたので, ググってみたら, 2000 年 2 月 1 日: 文化の違いなのかなぁ が, リンクが多数あり人気だった. 何故かというと, この記事では, Morphy One という小型の PC を作ろうというプロジェクトに 懐疑を投げかけたものなんだけど, これを書いた 1 年後, ネット上で「これは詐欺ではないか」という議論が沸き起こり, 結局, 2004 年の今年, 主催者が自己破産したそうなのだ. 今後, ハードウェアに GPL を適用しようとする人々にとって, 何より気の毒なことだ.

渋谷の交差点に, 文庫本だけの本屋さんができたので, ヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」を買った. この本を買うのは 2 度目である. 最初の文庫版初版は誰かに貸したままの筈. その前の, 単行本は, 当時鉄のカーテンの向こう側にいた ソ連の大作曲家の魂の告白であるということで, 音楽好きでない人々もこぞって買ったそうだが, そこに書いてあるのはグラズノフが酒好きであるとか, 弦楽四重奏がどうであるとか, 音楽の話ばかりであったので, 重版されなかったのだろう. と, 思っていたら, 20 世紀を考える一冊として再版された. この本は, 現在では偽書ということになっているのだけれど, もう少し理解したいと思っていたら 「ショスタコーヴィチの証言」は偽書的「聖書」である という面白い文章に出会った. 途中で, 「私は作曲家なので」という文章があり, へっ?と思ったら 吉松隆さんだった. 自分の思っていた, この本についての印象を, 大変明瞭に書かれてある.

Nick Cave の新しいアルバムが出たと教えていただき, Abattoir Blues / Lyre of Orpheus を聞く. この東芝 EMI 版は 3670 円する. 元の mute 版は 1691 円である. ニックが曲を書いて, The Bad Seeds が演奏して, エンジニアがレコードを作り, デザイナーが装丁した上で 販売する価格が 1691 円であるが, なぜか, 歌詞の日本語訳をつけて, 日本の音楽評論家が何かを書いたら 2000 円も高く, というか本体価格の 2 倍以上になる. わしの辞めた出版社ですら, こんな悪どいo翻訳ものは売らない. これって, 前のアルバムのように, 万が一 CCCD だったら, もう誰も許さないだろう. (という次第で, わしは日本語による解説を何も読んでない. 雑誌も読んでいないし. )

と, いうこと以上に, 聞いてうれしかったのは, なんというか生気が戻っていたこと.

でも, それ以上に哀しかったことは, Blixa がいない. 1998 年の Fuji Rock の時に見たのが最後になるんだけれど, あのときに舞台の上で王様の道化のように踊っていたのは, フィドルの人だった. Blixa はつまらなさそうに ギターアンプの前で, 楽器とアンプとを睨めっこさせていた. 何があったのか, ノイバウテンに専念したいから 脱退したということだが, Nick の音楽に社会が生まれて, その代わりに詩的な狂気が去ったのだ. ちょうど, クルアーンの成立 (初期の詩篇的な狂気から, 社会規範や道徳を教える法律として進化したように) と同じじゃないか. Blixa は, The Bad Seeds の大天使ガブリエル (聖ムハンマドに神の啓示を最初に授けた) だったのではないか.

それにも関わらず, 何とも興味深いことは, 前作よりも, 本作の方が元気を取り戻しているように 思われることだ.

あ, それからクルアーンといえば, ほぼ同じく 23 歳のときに「自分探し」に中近東を旅した者として, 香田さんの不幸を悼みます. わしが出会ったのは, 湾岸戦争に従軍したというアイメンさんが語った 不条理の数々であった. もう一つ見つけたのは, ストリート音楽の楽しさだった.


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10 月 24 日: アコーディオン仏

宇治の 平等院は お庭や建物の美しさもさることながら, 気合の入った学芸員集団がいるようで, 上記 web サイトも充実しているし, みやげ物屋で紀要?を販売していたりして, なかなかに素晴らしい.

この間, わしがいったときに, 仏の世界の歌と踊りをあらわす 「木造雲中供養菩薩像 51躯」 は付属の博物館の一室に展示されていたのだけれども, その中でひときわ目をひく姿の仏像があった.
平等院の画像を直接引用しています 南23号像(平等院の解説)
この姿は!「アコーディオン仏」ではないか! こいつは, アコーディオン弾きの元祖だと 騙せるかもと思い, 何枚か絵葉書を買った.

ところが, 昨日, ふっとインドネシア系の店をふらついていたら こんなものが売ってるではないか.

上の平等院の解説を見ていただければ判るが, これは「拍板(はくばん)」 というものだそうだ. 何が驚きかというと, この楽器が, 今でも現役の楽器だということだ. カスタネットの親玉にしては, 仏様の持ってる奴と同様に枚数も多くて立派だ. しかも, お茶目なものにはワンポイントがあるものだが, この楽器は把手が蜥蜴の頭と尻尾になっている.

もうちょっとネットを徘徊していたら びんざさらという大親玉がいた. 108 枚もあるという. 仏教的.

アコーディオンといえば, ついこの間ローランドから出たフルデジタルのアコーディオン Vアコーディオン も熱そうだ.


ついでに買ってしまったジャンベ. 直径 20 cm, 高さ 40 cm, 低音と高音の違いは出る. 二子玉川の河原で叩いていたら, カップルな人々が遠くから眺めていた. 家の中で叩くには, 鳴りすぎる.

2022 年 10 月 31 日追記: この拍板を用いた実演奏.途中から「シャララン」って音で出てきます.



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10 月 19 日: ストーリー

今日は出身高校で 400 人近い後輩さんたちの前で講演させていただいた. 人生論を喋って良い, ということで喜んでしまい, 話をいただいた 3ヶ月前にはすっかり PowerPoint の原稿ができていた. 学会や, 通常の研究報告で前日に慌てて作ったりしていることを思うと, 有り得ない準備の良さである.

昨日は, 大学で開かれた摩擦の研究会で 専門家の方々の前で講演させていただいたのだが, ここで人生論をぶつと, ぶっ殺されるわけで, そのことを思うと, 高校生相手というのは面白い.

が, ちょっと専門の話を入れたのがくどかったかもしれないと反省. 本題はフリーター生活におけるスキルアップの方法, にするつもり だったのだが, お世話になった教授たちのことが頭をよぎって, 大学などで科学について考えたこと, 学んだことを喋った. 「ストーリーは修正してもいい, しかし, ストーリーを捨ててはいけない」 という話. まあ, 勝手に参考にしてくれたら嬉しい. フリーター生活論については, 後日アップします. 論というほどのものでもないけど.

一つ気になったのは, 学生の方でこのページを見つけた人もいるかもしれない ので書いておくけれども, 結構みんな親のことを大事に思っているんですな. それは結構なんだけど, それを苦にして進学を途中でやめたら勿体無いと 思うのだ. 親が病気で, その費用を自分が負担しなければならない, といった状況なのだったら大学院進学はあきらめなければならないのかも しれないが, 親から仕送りを貰うのが申し訳ない, という程度ならば ノープロブレムなんですよ. 仕送りなくても進学できる. 自分の面倒を自分で見られればいいのだったら, 育英会 (借金) もあるし, 企業のヒモつきの奨学金 (入社前提で 修士課程の間奨学金を貰う) もあるし, わしのように超強力フリーターになればいいのです. 受けるべき教育を受けない方が社会にとって損失なので 罪作りなことだと言えよう. ちょっと, その点が心配だったので, より具体的な質問があれば (「超強力」って何ですか?など) 下さい.

その後, 恩師の話を伺っていて, 先生というのは素晴らしいのだと思った. 本来, わしは自分の都合の悪いことは忘れる主義なのだが, 先生はしっかり憶えておられる. 卒業するときに, 図書館の未返却の本が山のようにあって, 一度に返すのは無理なので分割して家から持ってきた, という話をされた. そんなこともあったっけ, 自分らしいかもしれん, と自分では思うのだが, なんだか泣きそうになった. もう一つ, そのことに関連して別の先生がおっしゃったことにも はっとした. 曰く, 「あの頃は勉強なんてしなかった, という話し方を すると, 今の子は, 本当にぼけっとまるで何もしなかったと思ってしまう. しかし, 何もしないのではなくて, 君のように無駄に読書をしたり しているんだよね」と. そうなのだ, バルトークの黄金の沈黙について, 考えていた筈だ. . .

さておき, 先生方, みなさまお世話になりました.


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9 月 13 日: カラー

紀伊国屋書店で恐竜本のフェアをやっていた. 朝倉書店が強い. 恐竜の本の大半は表紙からして愉快な嘘をついていて, 表皮の色が実はわからないということ. (でも, 本当に買ったのはスプライン関数についての二冊. ) トイレにいたヤモリは, 思ったよりも淡いアイヴォリー.

週刊文春に載っていた戦後まもなくの東京のカラー写真. これは騙された. 東京駅は鮮やかなレンガ色で, 八月の木々は緑で, 人々は思ったよりも日焼けしており, カラーで観る焼け残ったコンクリートの建物は, わしの現在住んでいる集合住宅と本質的に何も変わらない. それが証拠に, 隣の崩れ落ちた建物の 四角い基礎から突き出た鉄筋の生々しさ. 敷き詰められたコンクリートブロック畳. 信号機は今と同じ三色で, モダンな深緑色で, 空の青.

そもそも わしにとっての戦争認識の最下層にあるのは 田村隆一 「 立棺」であった. あるいは, 南方で蛙を喰らって生き延びたという祖先の話, あるいは, 物語, 詩語, とにかく言葉が最下層にある, という. 言葉では重すぎる.

入沢康夫「わが出雲・わが鎮魂」の復刻版を入手した. それでも言葉だ. カバーの裏側まで言葉だ. 初版が 700 部しかなかったのか, だからか. 15 年来の恋人, この作品についての認識自体が, 寄せ集められた, 評論や対談や諸々から, だった. はじめて空間を得た. ところでこれ, 最後の行に何と書いてあるかと 同居人に問うたら, ま, まさか 「意恵」じゃないでしょうね.


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8 月 13 日: iPod

友人に iPod を貰った. G4/40G の最新の奴だ. こりゃ参った.

これまで, 持ち歩いて聞くための機械はウォークマンを 4, 5 台持って いたような気がする. 予備校の講義を録音できるものや, 音楽を聞くだけのものや, リモコンがあったりなかったり, といろいろだった. あとは, ポータブルの DAT. これは主にライブの録音用だ. 考えてみると, ポータブルの MD や CD プレーヤは使っていなかった. スタジオで練習するときにポータブルの MD を使う人は大変多い. MD 嫌いなのか. うーむ, わりと嫌いだ. 存在の仕方が中途半端な気がする. 貰った車についていたオーディオが MD だったときに, 主に MD の音源は増えたが, 大半が, 行き止まりの音源になってしまっている. デジタル音源なのにデジタルコピーしないで下さいよ, という メーカーの作り方が, 下品だと思う. そりゃ無理だ. 私がスタジオで即興で作ったフレーズに, あなた方の権利関係がなぜ介入してくるのか.

最近は, 長距離の移動が増えたので, mp3 プレーヤ機能つきの携帯電話で音楽を 持ち歩いていた. 256 MB の SD カードに CD 3-4 枚分が入る. 様々な機能を一台に集約できることは, 移動が多い者にはありがたい. それから, 音楽を聞いてる最中に電話がかかってきても容易に判る.

ということでシリコンプレーヤーには満足していたのだが, iPod がやってきたのだった.

昔から Apple の作るものは尊敬している. Machintosh は, 仕事先や研究室では普通に使っていたし, 貰いものを家で使っていたこともあった. ただ, 「ドザー」などと言って他の計算機を使っている人のことを 馬鹿にできなかったのは, 自分が貧乏だったので, 自分で買う時は Mac 以外の計算機しか買えなかったからである.

そこへ, iPod が突然届いたので, やろうと思っていた 仕事に集中できなくなってしまった. 困った. いや, 仕事はします.

とりあえず, 書き物や計算をしつつも, 家にある CD を全部ぶちこむ. iTunes というソフトがデフォルトなので, とりあえず, それを使う. mp3 は 192 MHz 程度なければクラシックなどのゲネラルパウゼなどの 無音時に妙なノイズが乗る感じがするが, Apple 推奨の AAC の 128 MHz だと そういったノイズがない. もとの CD よりも平板な音はするが, 携帯用には十分の音質である.

実際の作業としては, PC のドライブに CD を突っ込むと, 各曲の録音時間を元に CDDB サーバというところを参照して 曲名やアルバム名を引いてきてくれる. これは iTunes だけの機能ではないのだが, CD を取り込むときに便利だ. これまでの CD 3-4 枚分しか一度に持ち歩かなかったときと比べて, 曲名などをデータベース化することの重要性が格段に違う.

CDDB サーバの曲の情報は, 自作の CD や, マイナーなものについてはない. 既存のものがなければ, ユーザーが登録することもできる. 市販の CD なのにデータがないものとしては, たとえば, 「爺と婆の世間話」 という出雲弁の本に付属の CD-ROM の情報は入っていない. 東欧で購入した CD の情報の大半もない. ロシアの CD は, 情報があるものもあるが, たとえば ソプラノの Ekaterina Kudryavchenko は, ネットで検索したら それなりに有名な歌手のようだが, ピアノの Ekaterina Sarantseva と 共演したグリンカからラフマニノフまでの歌曲集, の情報もない. ブルガリアの民謡の CD などはもちろん, ない.

しかし,
JVC ワールド・サウンズ「シーク教の祈りの音楽」 デリー・バングラ・サヒーフ寺院の祈祷,
というインドのおじさんがうなっている CD の情報は入っている. 情報があれば, 一曲ずつの曲名が表示される.
「"本当の幸せとは何かに関する教えと祈り"をインポート中」
などと表示されると, はっとする.

くものすカルテット「おてあげ」
これは我々の自主製作だからないだろうと思ったら, なんと情報を拾ってきた. 誰かが入れてくださったのだ. 何ともありがたい. でも, ドイツの立派なスウィング・バイオリンの
Wedeli Kohler「Swing & Folk」
の情報がないのに, くもかるのものがあるというのは, 何となく申し訳ないような気分になる. あれ, ドイツやロシアの CDDB サーバにつなげばいいのか?

それはともかく, こうやって次々と CD を iPod に食わせていると, 持っている CD が全部 40 G の中におさまってしまいそうだ. 100 アルバムの時点で約 1100 曲で約 5 G だった. たぶん全部で 800 枚は持っていないと思うので, 普通の人なら大丈夫だ. ちなみに, わしはカセットテープの音源の方が圧倒的に多い. これはどうしようか.

こうやって集めてみると, 阿呆らしいこと, たとえば「わしのベスト3」 のようなものを披露したくなる. 夏休みだし.

 1   Murder Ballads   NICK CAVE and THE BAD SEEDS 
 2   サウダーデ   久保田早紀 
 3   ショスタコービチ 交響曲第14番 
  ト短調作品135「死者の歌」 
 G. ロジェストヴェンスキー指揮 
 ソビエト国立文化省交響楽団 


1. については, Nick Cave のアルバムを全部の中で強いて ベスト 1 を挙げると, これ, ということになる. ソロになってからの Nick は, ジャンキーだった頃の 前半 5 アルバム, 麻薬との別れを告げた衝撃的な 「The Good Son (1990)」以降の 6 アルバムに別れると思う. Nick のテーマである死と愛について, 最も充実した環境で 殺人の歌を 10 曲全部に歌いこんだのが「Murder Ballads」だ. P. J. ハーヴェイやカイリー・ミノーグとの共演作もいいし, 15 分近くも, 酒場での殺戮について殺人者の立場で 披瀝しつづける O' Malley's Bar は, 物語歌謡の世界を追求する者として大変な作品である. バッハのシャコンヌ, あるいはベートーヴェンの大フーガのように 組曲の最後にこの巨大作品が鎮座しており, アルバム製作の王道とよべる作り方だ.

2. については, 前半はポルトガルのファドの楽団をバックにした 5 曲, 後半は普通の歌謡曲だ. わしが 2 位に推すのは, このアルバムの前半である. オルフェウス・ゴーシュで「異邦人」をカバーしたときに, 三浦小太郎さんという方が紹介してくださった. ああ, こういう曲に久保田さんはしたかったのか, ということがわかった. このまま, 異国の港町の風景を背景にしながら 物語歌謡の世界が広がっていく. この調子で, 毎週 1 曲ずつ新しい曲を歌って欲しいと思う. 逆に, 自分にとって, こういう曲を作りたいと最も思わせるアルバムである.

(ちなみに, wikipediaによると 異邦人をカバーした 19 団体の中で, 我々オルフェウス・ゴーシュによる 1995 年のカバーは 国内 2 例目,世界 3 例目である. 早い時点で注目していた相方の慧眼に改めて驚いた次第.2011.04.15記す)

3. は, わしがクラシック音楽の中で一番好きなのがこれなのか? と自分でも思う曲である. ショスタコの曲の中では, 後期の弦楽四重奏などと共に, 死について語った戦慄すべき曲である. マーラーの「大地の歌」の直系の子孫であり, その意味は, 音楽とは沈黙すなわち死との狭間に屹立すべきもの だということであり, いつも, このエッジを狙うのが作曲という行為なのだと考えたときに, この曲について思うのである. この曲を聞くと, この世に当り前に存在しているという意識が, ゆらっ, と揺らぐ.

あ, 夏にも良いと思います.

(後記): iTunes Music Store で Nick Cave を検索したら, シュレック2 に曲を提供しているなあ. 聞きたいなあ. 早く日本に上陸しないかなあ.


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8 月 1 日: 音楽ノ未来・野村誠の世界

湖国近江は水口町というところにいった.

水口町は豊かな町らしく, 図書館もホールも大変立派であった. 開演までに時間があったので, 図書館を歩いていたら

  さよならサンボ―『ちびくろサンボの物語』とヘレン・バナマン   エリザベス・ヘイ (著), ゆあさ ふみえ

という本が目に入ったので, 読んでいた. 「ちびくろサンボ」は, 1899 年にイギリスで生まれ, 1990 年に日本で死んだ, のだそうだ. つまらないクレームをつけて文化を萎縮させることが大好きな 連中というのはいつの時代, どこの国にもいるらしく, 同様の事件が 1970 年代にイギリスでも起こったそうだ. そのときのクレーマーに対する出版人の返答の手紙が 傑作であった. わしも, 新聞人と大学人のクレーマーの被害にあったことが あるのだが, そのときはただ萎縮してしまった. こう咄嗟に本質を突いた名文を書ける人間になりたいと, 思った.

この本には初版全編のコピーが載っていて, いろんな意味で面白い. まず, あっけらかんとした空間が豊かに使われている. なぜか「アリス」の原典の豪華装幀版を持っているが, そういうものと比べても詰まり具合は明らかに違う. 紙が安価になったということと関係があるような気がする. これを読んだ少年少女は, たとえばタイタニック号に乗船したのだろうか. 大人になって, 第一次世界大戦に出征したりしたのだろうか.

本題は, 野村誠さんのことだった.

野村さんは, 最初に音楽について教えてくれた人である.

長くなったので続き


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7 月 29 日: 美式天然

やっと, ジャズ喫茶「奏」での, ビデオ版上映に間に合った.

感無量とはこのことだ. 何よりも, 前作「12月の三輪車」でも思ったのだけど, 映画を作るということは, ただただ凄いことだ. この凄さに匹敵するのは, わしの友人知人では 北海道で祭をはじめた長谷川君くらいしか思いつかない. 映画を作るということは, それ自体が祝祭なのだ. とにかく, どうして物凄く沢山の他人が動いてくれるのか, ということが 判るようで, よく考えれば考えるほど不思議でしかたがない. わしが同時に把握できる人数は, せいぜい5人くらいだ. ツリー構造でいえば, 一層だけだ. そこから先の層には, どんな不思議があるのだろう.

ストーリーについては ここに良く書かれてあって, とくに書き足すことはない. もっとも, 実際の映画はとても重層的である. 広い部屋の中でキャンバスを前にぽつねんと座っている 吉田日出子さんの一カットについて考えるだけで, 一日を楽しく過ごせてしまいそうなくらいだ. それは, わたしらがマルチスケールと称して, 巨視的な時空間と 微視的なそれとをつなげて自然現象について何かを語ろうとするときのように, 巨視的なストーリーと静止画のような絵画的空間について, やわらかいモナドのようなものを配置していっているということ なのだろう.

単純明快, ではない. 単純明快であることよりも, 優先すべきことが あるのだろうと想像はできる. ものを作るとは, そういう困難をともなことだからだ. バンドで一緒に演奏しているときの 坪川さんとは別人だ, とくらいに思っておいた方がいいと考える. たとえば, 自転車でフィルムを運ぶ, ということについて. 映画とは, 和歌なみに本歌取りをするものだということくらいは知っている. たまたま, これは「ニューシネマパラダイス」の本歌取りなのではないかと 気がついた. しかし, それ以外の部分については未知の世界なのだと思う. わしは研究で闘っているつもりであり, きっと先の岳さんも下の山崎さんも それぞれの分野で闘っていると思うのだが, それ同様に 映画における闘いというものが多分あって, それはわしには よく判らないということなのである. だから, 中途半端に何かを断言したくないということになる.

ああ, でもそうだった. 風というか空気を, と語っていたような気がする. これについては大変よく伝わった. きっと, 短くても半年くらいは, この作品について 折にふれて, いろいろ思いだされることになるのだろう. とりあえず, 第一印象をここに.

あ, わしを観たい方は, 7:3分けに固まった紳士を探していただけたら 運がよければ見つかるかも. それから, オルフェウスゴーシュ版ではないが台湾娘が印象的に使われている.

その次の日は友人の結婚式だったのだけれど, 無伴奏チェロ, 二胡などのネタが出尽くしたので新曲を作った. ピアノパートは, 最初は新婦さんに弾いていただこうと思って作ったが, 結局彼女の先生の 山崎裕さんという素晴らしいピアニストに 弾いていただいた. いやはや, 心が洗われました.


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7 月 10 日: 和解

バーゲンの季節だ, ということで今日は銀座を闊歩しておりました. いや, わしは後ろをついて歩いていただけなのですが. HMV も何故かバーゲンだったので, メンデルスゾーンの 交響曲全集 (Radio Kamerorkest) と室内楽全集 (Brilliant) を購入. マドレデウスの久しぶりの新譜なども目に入ったのですが, CCCD は買わないことに決めているので.

ここ数年, メンデルスゾーンとサン=サーンスが好きです. マイスキーとアルゲリチの弟子の S. Tiempo の ソナタ集なども聞いていたりする. メンデルスゾーンのチェロソナタは二曲とも30代の充実した時期の作品であり, ベートーベンのチクルスとブラームスの二曲の間に位置する曲というだけでなく, ブラームスを凌駕するロマン派のチェロソナタの代表だと思っています.

メンデルスゾーン的なるものと, 和解したのです. 20代までは, もちろんシューマンの方が圧倒的に好きだった. とくに, 後期のバイオリンソナタやピアノトリオなどの 狂った作品を狂ったようになぞったりしていた. 明治文学でいうなら, シューマン=夏目漱石の苦悩や激情の方が メンデルスゾーン=森鴎外の美学よりもよほど切実に「必要」では ありませんか.

でも, このたび和解したのです. 誰かが, 「ご飯と味噌汁だけで生きていける人間には, 紅茶やケーキのような サン=サーンスの価値は理解できない」と書いていたと思うのですが, メンデルスゾーンについても全く同じことがいえるでしょう. 思いおこしてみると, チャイコフスキーについて考えていた 15歳くらいの頃に読んだ本に, 彼の音楽教師は 「メンデルスゾーンで音楽の歴史は終わった」と思っているような 人だった, と書いてありました. 普通に考えれば, 1850年頃の音楽は, そのような状況だったのでしょう.

これと関係するかしないか, 己の駄目駄目な過去と向き合うことなんて, まっぴら御免なのでありますが, そのような次第で, 過去と和解することに致しました. 久しぶりに, ピアノトリオの 1 番を聞いて, 当時 カザルストリオの有名なレコードを, コピーしてくれた人のことを 思い出して, 泣いておりました.

蛇足


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3 月 31 日: 先週のことですが

我が家のオランダシシガシラのハナが亡くなりました. 悲しいです. 悲しいです.


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3 月 17 日: チェコか

くものすQの主要メンバーがチェコにいったそうです. いいなあ.


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3 月 3 日: 春だ

ヤマハの SK1XG という小さなシンセサイザーを導入したので 寝ころびながら曲を作られるようになりました. ただ, これ人から買ったのですが, 教育用の特殊なものなのです. 市販のものは CBX-K1XG といって, マニュアルがネットで入手できる のですが, これと SK1XG とは微妙にキーが違う. LED の表示も最小限であるから, いろいろ触ってみて反応を 確かめるしかない. 分子シミュレーションのデバッグに似てますな. 袋に何か動物が入っている, 蹴ってみれば犬か猫かがわかる. 非道いな.

我が家で不評の映画監督に, ラース・フォン・トリアーさんがいます. 最初, 「奇跡の海」を観てなんじゃと思い, 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でむかついて, 最近新作が出たようですが間違いなく観にいきません. 監督独自の人間不信が, これでもかこれでもかと迫ってきて, 辟易とする. 最後は, わしが ラヴ&ピースの単純な人間で悪かったなと自己嫌悪に陥る.

その点, 最近ビデオでみた「猟奇的な彼女」は, なんだか嬉しかった. やっぱり愛だ. 誰でもこういう時代があるからかしらん. あなたと会えてよかったと, ただただ嬉しい時間が. いろいろあっても, ただただ嬉しい. 誰かが, これを日本で作ったら, キョヌをひそかに慕う女だの, 「彼女」の友達だの, 凖主役的な登場人物を配置することにより, 作品がつまらなくなる, と書いていました. そのとおりだと思います. 凖主役なんて人々はどうでもいい. あなたの記憶に, そういう人達が残っていますか.

もう一つビデオでみた. 「ピノッキオ」だった. 50 歳のベニーニが気持ち悪い. 間違いなく気持ち悪いと 言っておかねばならないのだが, これは男の浪漫でしょう. ああ, わしもこの類の才能があれば, こういう映画を主演したい. と, いう. でも, こんなのがヒットするイタリアという国は 凄いと思う. 尊敬されるべきかもしれない.

ついでに, 「戦場のピアニスト」. これは, ショパンを弾く主人公がチェロを弾く美女と出会ったら, 当然, 最後に出てくるべきはチェロ・ソナタ作品 65 を二人で 合奏する場面でしょう. と思ったら, 二人はすれ違っていたのだった. いや, せめて, 実話になかったのなら, エンドロールに 3 楽章を入れるとか. あ, 却下ですか. そうですか.


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