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Lecutre & Live
4 歳の頃に音楽を習いはじめて以来, 長らく,クラシック音楽はきちんとせねばならない, と思っていました. 適当な演奏をしてはならない. 正しく弾かねばならない. 逆に,自分たちで作ったストリート音楽ならば, もっと自由なのではないかと思いまして, 細々と演奏活動を続けてきました.
一方で,音楽マニアを何十年続けておりますと, クラシック音楽,というか音楽史に対するアイディアが どんどん溜まってきてしまいます. たとえば,不幸な作曲家ばかりに注目が集まって, 真にグレイトな作曲家について理解が進んでいない のではないか,とか. 貧乏,短命,障害がある,祖国を追われた,といった カテゴリーに入らない,たとえばハイドンは, その友人たるモーツアルトに比して解説書や エッセイの類は 1/10 以下ですが, 本来は,ウィーン古典派音楽の パラダイムを切り開いたのはハイドンではありませんか. どいうこっちゃ.
よくよく考えてみると皆さん, 幸福な人はグレイトな作品を作れないのではないか, あるいは,もっと深刻な観点として 「私的に雇われている人はクリエイティブな作品は作れない」と 心のどこかで思っていないだろうか,それが ハイドン (やボッケリーニ) の理解を妨げていない だろうか.と思ったのです. だとすると,企業につとめて基礎研究を行っている 自分ならば間違いだと気付くチャンスがあります.
また,古典派室内楽の弦楽四重奏を実質的に 開始したのは,ハイドンではなくボッケリーニであり, そんなことは彼らの初期作品を聴き比べたら誰でもわかる ことなのに,きちんと本に書いていない. ボッケリーニは,チェリストにとっては神様ですが, 他の楽器奏者にとっては良くわからない存在のようです.
私も不惑を超えてから,恥じらいがなくなりました. 上に述べたような薀蓄を述べてみたい, というか,誰か立派な評論家が本を書いてくれたら, それで私も満足できるのですが, 誰も書いてくれない. 一方で,私の拙い演奏, しかもクラシックという危険なジャンルで お客さんを満足してもらうのも, ちょっと恐縮です. ここはひとつ,音楽史に関する薀蓄と, 演奏とをミックスしてしまったら, ニッチを狙えるのではないかと思いました. アマチュアのチェリストであり, 企業研究所経験の長い物理化学者ならではの視点で, 音楽史を考えてみようと思った次第です.
ということで,2013 年に「とよたクラシック同好会」に お声かけいただいてから,毎年一回,レクチャー&ライブを 開催してきました. ハイドンのときは,彼が雇い主の侯爵ために 130 曲以上も書いたバリトン三重奏から抜粋演奏をしたり, ボッケリーニのときは,弦楽四重奏を「分解」して, 第一ヴァイオリンを抜いた形でハイドンとボッケリーニの 初期作品を比較演奏したりして, パワーポイントを使ったわかりやすい形でレクチャーしました (これは理系の研究者にとって基本的な技術です). これが 4-5 回分たまったら,まとまったエッセイにまとめたいと 思っています.また,演奏は室内楽形式で行っていますが, 素晴らしい演奏仲間とご一緒できて,幸せです. 最近の音楽活動のメインとなりました.
2015 年 7 月 18 日: メンデルスゾーンについてのレクチャー&ライブ開催しました
チェロは美しい! 歌と室内楽のひととき2
〜メンデルスゾーン:飛翔と祈り〜
at 愛知サマーセミナー 2015
http://www.samasemi.net/
日時: 2015 年 7 月 18 日 (土) 14:50-16:10
場所:椙山女学園大学
国際コミュニケーション学部棟 G階 010教室
星ヶ丘駅徒歩5分
参加費:無料 講座番号 D218
フライヤー (概要つき)
メンデルスゾーンは,19世紀のロマン派音楽を確立した人物です.交響詩の実質 的な創始,ソナタ形式における循環書法の確立,性格小品集の確立, ヴィルトゥ オーゾとは異なる交響的な協奏曲の提示,ロマン派における宗教音楽,交響曲, 室内楽,オルガン音楽の確立.さらに,バッハ再興,指揮の確立,音楽院の創立 と教育などが業績として挙げられるでしょう.もし彼がいなければ,19 世紀は オペラとヴィルトゥオーゾだけの世紀だったでしょう.
これだけ偉大な人物であるにも関わらず,同僚や後輩と比較して存在感が薄い. それは,遺された作品がこれだけロマンティックであるにも関わらず,彼の生涯 にロマンを感じられる人が少ないからではないかと考えられます.一昨年,昨年 とハイドン,ボッケリーニという二人の作曲家について新しい着眼点を示した講 師によって,本日はメンデルスゾーンのロマンについて演奏とトークでご紹介い たします.
当日の動画 1
当日の動画 2
当日の動画 3
当日の動画 4
当日の動画 5
多数の方のご来場をいただき,ありがとうございました. 次回は,ボロディンについて計画中です.
2014 年 7 月 19 日: ボッケリーニについてのレクチャー&ライブ開催しました
チェロは美しい!歌と室内楽のひととき
〜室内楽の父:ボッケリーニ〜at愛知サマーセミナー2014
http://www.samasemi.net/
日時:2014年7月19日(土)9:30‐10:50
場所:名古屋経済大学高蔵中学校・高等学校(桜山駅徒歩10分)特別教室棟2F音楽室B
参加費:無料(定員50名)講座番号:A137
フライヤー (概要つき)
ルイジ・ボッケリーニ(1743‐1805) は,ハイドンとモーツアルトの中間の世代の 古典派全盛期の作曲家ですが,「メヌエット」「チェロ協奏曲変 ロ長調」など今も有名な曲はわずかです.しかし,在世中はヨーロッ パ有数の著名人でした. 彼が活躍したのはフランス革命前後であり, 貴族の力が衰え,ブルジョワジーという 小金持ちの市民階層が勃興する時代でした. 彼らアマチュア音楽家は,宮廷よりも小規模なサロ ンや家庭内で,ヴァイオリンやチェロなどの楽器を持ち寄り数人で合 奏する「室内楽」に興じました.弦楽四 重奏やピアノ五重奏といった室内楽作品は,出版によって流通しましたが, そのベストセラー作曲家のトップ 2 人が,ボッケリーニとハイドンだったのです. 本レクチャー&ライブでは,室内楽の誕生について,演奏とトークでご紹介いたします.
多数の方のご来場をいただき,ありがとうございました. 来年は,メンデルスゾーンについて計画中です.
2013 年 5 月 25 日: なんと音楽の講演会
6 月は高分子学会のポリマーフロンティア 21 や名大院での集中講義など, 長丁場のプレゼンが続きますが, もう一つ,こんな講演会を妄想しています.音楽です (笑)
サラリーマン音楽家ハイドンに学ぶ
宮仕えとイノヴェーション
講演要旨
「交響曲の父」ヨーゼフ・ハイドン (1732-1809) は,交響曲のみならず室内楽 や協奏曲においても傑作群を遺し,今日我々がクラシック (古典) 音楽と呼ぶも のの骨格を作った人物である.近年,バリトンという風雅な弦楽器を用いた 100 曲以上もの室内楽作品や,オペラをはじめとする 30 曲以上の舞台音楽が再評価 され,一昔前のクラシックファンが持っていた若干地味な印象が覆されつつある. ハイドンの人生については,エステルハージ侯爵家に仕えていたこと,その後ロ ンドンに渡り後期の有名な交響曲群を作曲したこと,晩年はナポレオン軍侵略の 嵐の中,ウィーンで亡くなったこと,モーツアルトの先輩かつ友人でありベートー ヴェンに作曲を教えたことになっていること,もう一つ付け加えると妻は悪妻で あったこと,くらいしか印象に残っていないだろう.人柄も温厚で,長生きをし, 劇的なエピソードもあまり知られていないハイドンが,なぜクラシック音楽とい う画期的な様式を創造することができたのか,その人生論から答えを導くことは 難しいように思われる.この難題について,企業研究所において物理化学の研究 開発に従事する筆者が,宮仕えとイノヴェーションという観点から考察を行う. 自由な発想,真に文化的な発想は自由業でなければ湧かないのか.そうでなけれ ば,宮仕えというシステムの中でどのようにイノベーションは起こるのか.有名 な交響曲からコンサートではあまり演奏されない作品までを聴きながら,ハイド ンの秘密に迫りたい.
6 月 29 日 (土) 14:00-16:00@ とよたクラシック音楽同好会 です.