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8 月 14 日: 子供用フルサイズ楽器

このたび,子供用のフルサイズの楽器を購入しました. 結論から申し上げると, 自分の子供の頃に使ってた楽器( II 号 BENEDIKT LANG 君 )より,はるかに良い楽器です.

チェロ: Matsuo Maestria C04-1 (2006) (松尾弦楽器製)


サンプル演奏

( この演奏と同じ自作のオブリガート)
チェロ:Matsuo Maestria C04-1, 弓: ENA,弦:Larsen Strings Magnacore Arioso (C, G, D, A), 録画:iPad


自分のメインの楽器である 第 3 号 Traversi の説明のときに書きましたが,子供にチェロを習わせるときに, あまりに悪い楽器だと,私自身のように親にずっと文句を言い続ける状態となります. 分数楽器(Ena 3/4) は,まだ,「まあ,すぐに変わるんだし」という言い訳が 言えましたが,フルサイズの場合は,下手すると子供が一生使うことになりますので, 十分な配慮が必要になります. かといって,あまりに高い出費だと,全くの無駄骨,になることもあります. 周囲の皆様を拝見していると,お子さんが楽器のお稽古を止めるのは,中学生くらいが多いです. この時期にフルサイズになるので,大変辛いわけです.


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これも, 第 3 号 Traversi の説明のときに書きましたが,常識的には,楽器は, 師事している先生に選んでもらうのが一番です. 弦楽器って,型番とかラベルだけで性能が決まらないです. 木材なので当たりはずれがありますし,工房の中でも加工精度にムラがあり, さらに調整や,完全な新品でない場合はどのように保存・演奏されてきたか, など様々な要素が複合的に楽器の状態を決めます. そういうダイナミズムを,我々アマチュアが体得するのは困難です. そこで,安易に先生に頼ったら良いのです. 世の中,というかネットを見ていると,最近は先生を信じないという人が多くて ビックリします.チェロは文化なのです.

ついでに余談ですが,ネットを見ていると,「先生に習っていない」人や, 「自分がまあまあ弾けるアマチュアなので,孫に教えている」といった方が おられますが,本当に,それは止めた方がいいです. チェロを,ちゃんと鳴らすのは大変です. 世の中がゾンビまみれになったとか,無人島で孫と二人になった, とか,そういう状態でなければ,日本国内にはチェロの先生は 沢山いらっしゃいますので,是非,習ってください. 私のサイトの書き込みが,完全な自習の人の参考に 引用されてるのを見たことがあって,辛くてページを 消去しようと思ったことすらあります.頼むからやめてください. 私は,子供の頃は月に数回というペースで習っており, 大人になって上京して親がいない苦学生を続けていたので師事をやめました. そういう特段の事情がなければ,まして初心者は,師事してください. 教える・習うって作業は楽器の場合は完全にインタラクティブ・双方向的です. 子供の状態を動的に見て,そのときに必要なアドバイスを時々刻々, 適切に言えますか?伝えられる技術がありますか? 自学自習の場合は,自分で気づきますか? ということです.

ということで,今回はフルサイズの楽器なので, 先生のストックされていたものを譲っていただきました. 大阪の松尾弦楽器の Maestria というブランドなのですが, ネット上にはほとんど情報がありません. オークションで売られているのを数件見ましたが, 関係は良くわかりません. 現在は,販売されていないもののようです. 制作された 2006 年当時の過去の店のサイトにも情報がなかったので, そもそも,あまり出回っていないものだと思います. スズキの分数楽器でも,とても鳴る楽器とそうでもないのがあります. 教室で使われてた分数楽器は,本当に良く鳴るスズキでした. 弓でも,プロの奏者はメーカーと個人的なつながりがあるようで,ピンキリです. なので,これもネットの情報を鵜呑みにしない方がいいです. 目の前にある楽器が,道具としてどうなのか,これに尽きるわけです (あ,1000 万円以上出すようなときは,資産価値も気にしたら良いかと).


日本のショップブランドの楽器に多いように,多分,この楽器も 輸入品を調整して,みたいな感じなんだと思いますが, 私程度の眼力からすると,全然良い楽器です. 3/4 の ENA は,結構鳴る楽器で練習用には良かったのですが, ニスが特殊?だったり,指板が本物の黒檀じゃなかったり, 基本的な部分が謎でした(けど,それを補うくらい,真面目な 音が出る楽器で,好きですよ). その点,この楽器は 怪しい部分が全くありません. スクロールの彫りが,こうだからこう,みたいなことは 私には判りませんが,普通に,ええ感じに見えます.


この楽器は,教室の練習用楽器だったので, 左手がたまにぶつかる本体の肩の部分と, A 線のボウイングの制御不足から擦れてしまう部分について, ビニールが張ってあります. 新品に近い状態を維持するためだと思いますが, 弓が触るとキーって不快な音がして,練習にもなります(笑). もう剥がして良いのですが,しばらくつけておきます.

楽器自体は,明るい色合いで,子供も気に入ってました. というか,気に入ってもらわないと買わないぞ.

弦についてですが,先生が,前についてた弦を Arioso に替えて くださったら,とても良い感じになりました. 実は,以前,メインの楽器で普通の Magnacore を張ったことが あったのですが,Sprocore Soloists に比べて華やかさが 全然なくなっちゃって,なんじゃこりゃと思ったことがあります. Magnacore Arioso になったからなのか,楽器との相性なのか, ともかく,この楽器には Arioso が合います. といっても高いので,張り替えるたびにヒャーってなりそうですが.


裏板も Traversi クンと同じような一枚板で, 虎杢が美しいです.末永く,大事に弾いてもらいたいものです...

SNS で親同士で語り合ってたのですが, まあ,子供が後から怒らない程度の楽器を与えておいたら いいのかなと思いました. 私の友人でも,これくらいの価格帯の楽器を親には買ってもらって, アマチュアとして続けて,自分の財力がついたら納得のいく楽器を買って, 大人のコンクールに出たような人がいます. その人のように,本気で活躍したければ,大人になってから 自分で買ったらいいと思います. フルサイズになると,一通りのレパートリーを習うと思うので, それが練習できる程度の楽器として,これでいいのかなと思った次第.


今回はケースも購入しました. Ossi オッシ CPC2021 というショップブランドですが, 右隣にある F.E.L. Chenonceaux と比較しても, 取っ手が二カ所あるなど基本性能は一緒ですが, 軽いし安いし,留め金も軽く閉じられるように進化してるし, 言うことなしです.表面も傷がつきにくそうだし. F.E.L. は,1998 年くらいに妻が買ってくれたもので, 色合いもスタイルも結構気に入っていますが. 1980 年代からずっとソフトケースしか持っていなかったので, 「やっと,これで満員電車に乗れる!」と狂喜したものです.

この週末は,サン=サーンス,ラロ,ハイドン,ドヴォルザークなどの協奏曲, ポッパー,ピアッティ,グリュツマッハなどの練習曲, 今度,人前で演奏予定のアルペジオーネなど,子供の頃に習った, これからうちの子供も習いそうな曲を一通り弾いておりました. やはり,「どうしてこういう楽器を買ってくれなかったんだ」と 親を責めたい気分に,子供の頃から人生をやり直したい気分になりました. この楽器だったら,楽器のせいで練習にならない,ということは 全然ありませんでした.アマオケの中で弾いていてもおかしくないし, 何ならソロを弾いても良さそうです. と,思いながら白鳥の湖のパドドゥを弾いていました. こんどの 10 月に,子供と一緒にプルトを組むアマオケの本番がありますが, 本当,親馬鹿冥利に尽きます. あと数年,真面目に練習したら,技術的にも親を追い越してくれるはずなので, その状態になることを祈っています.