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兵庫県立大は新しくて伝統のある関西の名門大学です
兵庫県大は全国的に有名,ただしプロには
大学院に進学するときに,ネームバリューを気にする人も多いでしょう. 兵庫県立大学は 2004 年に開学した大学であるため, とくに関西圏以外における知名度はあまり高くないと思われます. しかし,筆者は名古屋の高校を出ましたが,同世代の人々に「姫路工大だよ」というと, あるいは文系の人には「神戸商大だよ」というと, 大体納得してもらえます. 姫路工大理学部は C 日程というレアな日程だったので, 予備校の模擬試験などを受けるときの志望校を書くときに, 名古屋市立大学薬学部などと並んで目立っていました.ネットなどを見ていると,兵庫県における,神戸大学の次にいけてる 大学はどこか?という議論があり, 関西学院大学と兵庫県立大学とどっちや,みたいな話があります. 理工系の筆者からすると,兵庫県大の方が有名です. それは,筆者の専門のトライボロジーや分子科学の学会などに出ると, 兵庫県大の先生や学生さんたちが, たくさん発表しているからです. しかし,これは特定分野のプロの目から見たときの話で, 一般人に知られていなければ困るのではないか, と思うかもしれません.
不動産屋さんが東工大を知らなくてショック
筆者が自分が進学することとなる東工大の存在を知ったのは, 高校 1 年のときでした. 所属していた水泳部の先輩が,東工大を見学にいって, 生協で「東工大」と書かれた T シャツを買ってきて,着ていたからです. 「それ何すか?」と聞いたら,「お前,東工大も知らないのか」,と. 名古屋では,今でもそれくらい無名だと思います.もっとショックだったのは,入学してアパートを借りる際に, 東京の不動産屋のお姉さんに大学名を聞かれて,答えたら, 「え?トウコウダイってどういう字ですか?」と言われたときです. 大学は目黒区にあって,アパートは隣の世田谷区だったのですが, そんな感じです. そのときに,一般人の視線はどうでもいいや,と開き直りました. たまに,アルバイト先などで「お,兄ちゃん東工大か,俺知ってるよ」 と言ってくれる人がいました. そういう時の言い方は,俺はちょっと知的で,知ってるんだぜ, と皆さん少々自慢するような口調で言われるのです. たぶん,兵庫県大の皆さんが姫路や上郡に住んでいて, こんな仕打ちを受けることはないと思います.
21 世紀に入って公立大学は躍進している
体験談のような話ばかりでは申し訳ないので, 少々データを見てみましょう. 文科省によると,全国の公立大学は平成元年に 39 校だったのに対して, 現在は 94 校と倍増し,これは国立大学より数校多いです. 学部と大学院の学生数からすると, 兵庫県大は 3 位, つまり大阪公立大,都立大の次に多く,存在感があります. また,昔の大阪市大,府大の存在感からもわかるように, 関西圏は昔から公立大学の存在感が大きい土地柄でした. 一般的に,日本の地方では県に一つの国立大学が圧倒的で, 公立大学はあっても規模が小さく特定分野に特化しているというイメージですが, 関西圏には公立の総合大学が多数あり, 優秀な人材を輩出してきた歴史があるということです. 兵庫県立大学は,この流れの中で中心的な存在の一つといって良いでしょう.研究志向
研究面では,トムソン・ロイターズ社の論文引用度指数ランキングで 全国 10 位以内に入っています (図は筆者の専門の材料科学で 8 位, 工学で 5 位,「大学ランキング 2011」朝日新聞出版). 論文の総数は大手の大学に比較すると少ないですが (この場合の大手は旧帝大+東工大), 個々の研究室のレベルは高く, 世界を相手に研究で戦っている大学といえます. 左の材料科学のランキングを良くご覧いただくと,実は数においても,知名度の高い 慶應,早稲田や筑波大と同規模のアウトプットであることがわかります. また,ここにはデータを示しませんが,科研費など公的資金の獲得においても, (大量の予算を消費する) 医学部がないにも関わらず, 兵庫県大はこれら有名大学に負けない獲得実績があります.当情報科学研究科計算科学コース(旧シミュレーション学研究科)自体が, 地方公立大学としては非常に特殊な,「尖った」大学院です. 京コンピュータ,スパコン富岳と同じ敷地に存在し, 最先端のスパコン技術の研究・教育を担っております. そのため,5 年おきに数億円の計算機システムを県が責任を 持ってリプレイスいただいています. 計算科学コースの外部資金は 教員(教授,准教授合計 11 名)一人平均 1,000 万円を超えています. これは,旧帝大を超えるレベルで,東大・京大クラスです. このため,この全国有数の研究環境を求めて,院生,研究員の皆さんが 全国・世界から集まっています.
博士後期課程の学生に生活費・研究費を支給する 「 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」 にも本学は選出されています.全国に大学は 800 校ほどありますが, 本学は間違いなく,上位 50 校程度の「研究大学」に含まれています.