「備忘録」に戻る

トライボ村への勧誘


原子力村」という言葉を聞いたことがあるかと思います. 2011 年以降は,とくに印象の悪い言葉となりましたが,本来は 特定技術に関する産官学の連携を指す言葉であり, 「その中で暮らしていたら,安定した生活を送りつつ企業研究開発者として イノベーションを起こせるシステム」程度の意味でした. この意味で,我々の研究室はトライボロジーの「トライボ村」の住民です. ここの住民になると,一流企業の研究開発職として就職し, 研究開発や学会活動を通じて他社や大学等と連携し, 日本の産業を安定成長させ,自分も幸せとなる,ことができます. 今どき珍しいかもしれません.
着任して2年半,筆者は研究室の見学に来る学生さんに,このことを説明して, 参加してみてはいかがかと申し上げてきました. 何度も同じことを言うのも面倒なので,本稿にまとめておきます.

トライボロジー業界

当研究室の代表的な専門分野として「トライボロジー」という分野があります. これは,1966 年に提案された言葉で, 「2 つの物体が互いに滑り合うような相対運動を行った場合の相互作用を及ぼしあう接触面, およびそれに関連する実際問題についての科学技術の一分野」と定義されています. もとは摩擦・摩耗・潤滑と呼ばれている領域です. かれこれ半世紀になりますが,ご存知の方はどれくらいおられるでしょうか? 筆者の周囲だと,研究関係の友人知人以外だと 「筆者が度々述べているのを聞いた」ことがある人,というのが大半です. まだまだ認知度は低いです. しかし, 日本トライボロジー学会の維持会員 の企業一覧を見ていただいたら判りますが, 日本の製造業の主だった企業は軒並み関わっておられます. 日本という国は,機械工学,電気工学,材料工学の三本柱を 輸出する製造業の国 で,その根幹にトライボロジーは位置しています. 機械を動かすのには潤滑油や表面処理が必要であり, 金属製品の製造(鋳造や鍛造)にも潤滑油が必要です. トライボロジストは「機械のお医者さん」と呼ばれていて, 処方箋を出し, トライボロジストがいなければ工場の機械は焼き付いてしまいます. 皆さんは,自転車や自動車など所有されてる機械の 「メンテナンス」という言葉を聞いて,オイルやグリースを 機械にさすイメージを持たれているのではないでしょうか. そうした生産からメンテナンスまでを含めた トライボロジーの日本の GDP への寄与は 3 % 程度であると言われています.
トライボロジーを中核的技術としているベアリング (転がり軸受,すべり軸受) は, 機械産業のコメと呼ばれていて, 数社ある企業の経営は大変安定しています. 市場規模は世界で年間約 4 兆円でして,そのうち半分は日本企業が 関係しています.日本の米の市場規模が約 3 兆円ですので, ベアリング企業は農協(JA)と同じオーダーの産業規模である, ということです. 鷲津研究室は,軸受上位 4 社全てと共同研究,社会人博士の受け入れ などを通じて連携しています.
オイルの側に目を転じると,潤滑油 (世界市場 8 兆円) は大手石油会社が主に供給しています. そこには大抵,添加剤が混ざっていて性能を左右するわけですが, 添加剤専門のメーカーが沢山あります. また,ハードディスクなど特殊な機械には,それぞれに適した潤滑剤があり, そうした潤滑剤メーカーも沢山あります. 鷲津研究室は,石油上位 2 社と共同研究,卒業生の就職などにより連携しています.
軸受,石油以外のメーカーですと,自動車,重工業,製鉄が主な分野として ありますが (国内メーカーだけで数 10 兆円の市場規模ですが,この中の トライボロジーの寄与率を正確に述べるのは難しい), 鷲津研究室は,それぞれの分野の主要メーカー様と共同研究を実施しています. 何故,これら大手メーカー様とタイアップできるかというと, 我々の研究室では「分子レベルからの潤滑」というテーマを 20 年ほど続けていて, お蔭様で,日本国内,あるいは世界的に見ても有数の研究室であるからです. 我々の特徴としては,教員が産業出身で現地現物のニーズを良く把握していること, トライボロジーに適したシミュレーション手法の開発をずっと行ってきたこと, とくに,分子集団のレベルよりもマクロな領域では日本で最も精力的に 手法開発を行ってきたことが,お認めいただいている理由だと思います. また,実際に研究に携わっているスタッフ,学生の出身分野が, 物理,化学,機械工学,電気電子工学など多様であり, 様々な観点から得意分野を活かして総合的に技術構築をしていることも特徴だと思います (実は,この出身分野が広いこと自体にトライボロジーの特色があります).
本稿では,「トライボロジー業界に就職したらこんなに幸せだ」という 話をしたいと思います. 既にトライボロジー業界におられる方には常識的なことが多いです. 一方で,産業とご縁の薄い方は,学生のみならず先生方にとっても あまりご存知ないことなのではないかと思います.

トライボロジーは大企業から町工場まで必要

気象衛星の寿命は何で決まるか,皆さんご存知でしょうか? 気象衛星は,日本の上空の静止軌道上を飛行していますが, 日本の方向を向いて画像を取得するために,様々な回転運動を 行っています.しかし,宇宙空間では液体のオイルは 蒸発してしまうため,固体潤滑剤や特殊なグリースを用います. この潤滑剤の寿命によって,気象衛星の寿命は決まると 言われています. また,ロケットを飛ばすのにもエンジンが必要で, 航空宇宙産業においてトライボロジーは大変重要です. 最近こそ,航空宇宙産業において 中小企業が表立って活躍されていますが, 重厚長大の産業の代表かと思います.
一方,iPhone の外装など,金属表面を研磨するのは 中小企業が得意としているというニュースはご覧になった ことがあるかと思いますが,こうした機械部品の研磨, 小型の機械部品の製造については,日本各地において 大変多くの中小企業が「オンリーワン」の技術を武器に 活躍されています.
先日も,不二 WPC という社員数 10 数名のメーカーが, 文科省の物質・材料研究機構(NIMS)のチームに 滑らせ対決で勝利する というテレビ番組がありました. 不二 WPC さんの技術力を知っていた我々トライボロジストに とっては,この結果は当然予想できたことでした.
トライボロジーの強みは,この「産業規模がスケーラブルである」ことです. 大企業から町工場までトライボロジストを必要としている, ということは,その人の経歴や能力に応じて,様々な場面で 活躍できる,ということです. イメージがわかない人には,製薬業界をイメージしていただいたら わかりやすいかと思います.製薬業界では,新薬を開発しているのは 特定の大企業のみです.これは,認可されるために膨大な実験が 必要だからです. ところが,トライボロジーの製品開発に関しては, 中小企業でも最新鋭の技術を普通に開発しています. 最先端がどこにでもあるのです. 自動車,重工業,オイルメーカーのトップ企業だけが 「偉い」のではないです. このスケーラブルな感覚は,自動車メーカーに数年いたら 誰でも気づきます.自分たちの持っている技術が必ずしも ベストではない,なめてかかることができる企業さんは どこにもない,という感覚です.
産業力が分散している,スケーラブルであるということは, アカデミズムにおいても同様のことがいえます. トライボロジーの研究室は,いわゆる旧帝大,一般の国公立大学, 私立大学,高専,大学校,工業高校まで, 幅広い学校において先生方がおられます. これも,(筆者の出身である)分子生物学を引き合いに出して 悪いのですが,製図の授業を担当できる先生は必要であっても, 電気泳動を教える先生はそれほど必要ありません.
ということで,筆者も含め,企業から大学教員になっている 人はトライボロジー業界には沢山おられます. というか,企業経験が一度はある人の方が 多数派だと思われます. 要するに,他の分野と比べて, 企業の研究開発者になるのも容易だし,だから,教員になるのも 容易なのです.

業界人はトライボロジー学会に集う

研究室見学に来た学生さんに,「トライボ村で生きる」と言っても, 最初はピンと来ない方が多いようです. 「トライボ村で生きる」ことは,学閥という言葉と似ています. 筆者は良く知りませんが,医学部に行って大学の医局に入って 病院に派遣されるという昔の医者のイメージ,よりは束縛が 少ない印象があります.文系就職をして,大学閥で交流会をする というイメージに近いですが,それとも若干違います.
いわゆる「学閥」と違うところを説明します. トライボ村の住人はトライボロジー学会に集まります. 春と秋の年に 2 回,全国から会議に集まります. そこで,各メーカーの研究開発部門に就職した皆さんの 元気な顔を先生たちが見る,ということになります. この学会では,産官学のバランスがとれています. 学会長も,大学と企業とで順番に出し合っているくらい, 企業の力が強い学会です.企業研究者が楽しい,とも言い換えられます. そうすると,「学閥」とともに「メーカー閥」も当然ある, ということです.社員として当然ですが,出身大学よりも どの会社の利益を代表しているか,の方が大事です. 「大人」としての対応が必要であり,企業秘密を洩らさない, といった当然のコンプライアンスも必要です.
トライボロジー学会は(原発関係も,他の機電系などの業界も 全部そうでしょうが),医学系や,あるいは純粋理学系の学会 (日本物理学会など)ほど「大学」が偉そうではありません. これは,「学閥」と「メーカー閥」が並立しているからです. これが「トライボ村」です.
この写真は,World Tribology Congress (WTC) 2017 での授賞式で, 鷲津研の小西君と秋山君がダブル受賞して, 社会人博士の野田さん (右から 6 人目) が代理で表彰状を いただいているスナップです. 当研究室では,修士学生も,国内のみならず海外の学会での 発表もどんどん奨励しています. 研究室開始以来,受賞件数もうなぎのぼりで なんと卒業(修了)生全員が,トライボロジー学会の 学生奨励賞(年に 2 人しか出ない)や, WTC の賞を受賞しています.要するに世界トップレベルです. こういう場で目立って,近隣にいる一流企業の 研究開発職の方々に顔を覚えてもらって, それらの企業に入ったり,ご縁を作ったりするわけです.

次のステップは学会誌の「編集委員」

学会に出て,発表したり,情報収集することを重ねてくると, よりディープな付き合い方として 「学会誌の編集委員になる」ということがあります. 筆者は,自分が学会誌の編集委員の運営を担当していた 2013 年の 下記の表を,学生さんに良く見せます. クリックで拡大 ここの右上に,沢山の人の名前が書いてあるでしょう. この人々は,編集委員長は東北大学の先生,副委員長は福井大学の先生と アカデミックな方々ですが, それ以下の委員に関しては,アカデミックの人は 岩手大,九州大,名城大,産総研,明石高専,JAXA,新潟大, 大同大,富山県立大などで,企業研究者の人は, 豊田中研,日立製作所,ホンダ,大豊工業,IKKショット, IHI,NTN,栗本鐵工,出光興産,コスモ石油ルブリカンツ, JXTGエネルギー,NSK,JTEKT,MORESCO と, 様々な分野の企業の人々が集まっていることがわかります. このメンバーが,月に一度集まって,「学会誌の特集を何にしよう?」と 悩むわけです.それぞれの分野の方々の知恵とコネクションによって, 記事の構成と,執筆者探しをします.
筆者は(通常はアカデミズムの人が担当する)取りまとめ役をやることになって, 要は月刊誌の特集を毎月新しく考えることになりました. そこで,それまでは自動車産業のことばかり考えていれば良かった (というよりエンジンと変速機のことばかり考えていた)のですが, 新聞やテレビ,ネットの記事を読むたびに「これは特集記事にならないだろうか?」 ということばかり考えるようになりました. 311 の後でしたから,火力発電,トイレタリー(肌にふれる生活用品)など 考えもしなかったシステムについて考えました.
ある意味,自動車以外のことを考えることによって,自動車業界からスピンアウト してしまうきっかけになったともいえます. ここで出会った方々とは,今でも親しくお付き合いさせていただいて いまして,一生の宝です. 会社を辞めて大学に移って一人になったわけですが, そのときに真っ先に声をかけてくれて,共同研究の提案や, 社会人博士学生の入学を企画してくれたのは,こうした企業の仲間の皆様でした.
編集委員会以外の別の委員会では,先に述べた春と秋に行われる学会の企画や, 講習会の企画といったこともします. そういう場で,当然ですが,技術のトレンドについて情報交換をするわけです. そして,真面目な昼の部が終わったら食事会があるわけです. では,どういう人がこうした,各メーカーや組織の研究者になるかというと, それは,筆者自身のように良くわからずこの業界に入ってきた人もいますが, 大学の卒業研究の時から,この学会で発表してきて,就職の際に, 指導教員の推薦などで入ったという人々が構成員となるわけです. そして,入社後,何年も経ってから,自分の大学時代の先生が編集委員長になったりすると, 「君も委員になってくれないか」と招集がかかるわけです.

技術者は一生の付き合い

学会活動だけではありません. このような形で研究開発者として大学から企業に入ると, もし仕事がうまくいかなかったとしても,別の企業を紹介することができます. 何故なら,優秀な若手技術者はどの企業からも引っ張りだこだからです. 筆者が企業研究者だった頃も,「今,○○社でくすぶっている人がいるんですが, △△グループで採用できる枠はありませんか」といった質問を 大学の先生からお受けすることが度々ありました. 企業側にとっても,適材適所の人事交流があった方が良いに決まっているからです.
これが,教員側の研究教育活動に全く関係のない分野の企業に就職して しまわれると,このようなサポートをすることは,できなくなります. たとえば,筆者は通信業界はあまり詳しくありませんので, (トライボロジーの関係ないような)通信会社に就職してしまったら, それ以降は「仕事上の」付き合いはなくなってしまいます.
純粋な理学系の人は,まさか,大学の先生に卒業後も面倒を見て もらえるというイメージは,持っていないかと思います. こういう「ご縁」を産業界と持っていない先生のところに 入ってしまうと,いくら日本で5本の指に入るような大学であったとしても, 就職後のケアは一切受けられない,ということになります. それ以前に,研究開発職として就職することすら困難でしょう. 大事なのは大学のネームバリュー,ではないのです.

ロンダリング vs "ご縁"

以上のようなことを書きますと,ひょっとすると「自分は実力が あるから先生のコネなぞ必要ない」と思う人がいるかもしれません. それは,立派な心掛けであり,結構だと思います. 何だかんだ言って我々は技術者ですから, 技術的に圧倒したら,職場も地位も自然についてくる かもしれません.
ただ,それは大変ハイレベルなことだと思います. 筆者は東大の大学院を出ました. しかし,就職先は出版社でした. 東大とあえて書いたのは,自慢をしたいのではなくて, 「東大を出てもご縁がなければエンジニアにはなれない」 ということを言いたいのです. 旧帝大レベルの大学院を出て,派遣社員をしている人は 沢山おられます. 派遣社員の方々は,兵庫県大の筆者の研究室を出た学生が就職するような 大手メーカーの研究開発部門に派遣され,補助的な仕事をします. そういう仕事なら,有名大学を出たら出来ます. 筆者はそういう職種よりも編集者の方が やりがいがあると思って出版社に就職しました.
申し上げたいことは,「旧帝大院を出たら何とかなるだろう」 という考えは大間違いだということです. 旧帝大院に,いわゆるロンダリングをして, 筆者と同じレベルの産業界とのコネクションがある 研究室に行けたら,それは結構でしょう. しかし,そういう研究室は普通は人気で, 外部から入りやすい研究室とは,そういう意味での人気の ない研究室が多いことは,想像したらわかるでしょう.
長年,筆者は有名企業研究所で採用担当側でした. マイナビなどで登録していただくと,技術者サイドとして 登録情報をチェックするわけですが,どうしても 「知ってる先生」の学生の欄に目が留まります. これは,専門分野が近いから当たり前のことです. そこを,無名研究室出身の方が割り込むのは,大変なことだと ご想像できるのではないかと思います. 繰り返しますが,筆者自身は「東大」でしたが「無名」研究室出身でした. 「ご縁」を構築するのは,ものすごく大変でした.

結局,誰かに導いてもらう

先生のコネについての話をを続けますと, 前節に書いたように, 企業に研究開発者として就職したら,就職後も, 外部のベテランからのサポートがあった方が良い場面が 沢山あります. 論文を通したり,博士号を取得したり, 学会賞を受賞するとき. 技術的な情報を交換したり, 公的なプロジェクトを得たり,公的な予算を獲得したり, 人材交流するとき. そういうとき,自分に助言してくれたり,声をかけて メンバーに入れてくれる外部のベテランがいたら 研究開発が進みます.
もっと率直に言うと,研究開発活動を続けていくと 「奨励賞」という学会賞を 35 歳までにもらえると, 会社内で「外部から褒めてもらった」ということになりますので, 立場が強くなります.こうしたものは,誰かが プッシュしてくれたら,より受賞しやすくなります. 筆者自身は「うぶ」でしたから,考えてもみませんでしたが, どなたかが筆者のことを評価してくださり,賞をいただきました.
もちろん,自分に十分な才能があり, 会社内や学会内で評価してくれる人がいたら, こうした活動も問題ないでしょう. 先生のコネ,あるいは研究室の先輩のコネなぞ必要ない, というのはやはり, 立派な心掛けであり,結構だと思います.
しかし,筆者自身もそうしてトライボロジー界に入り 企業研究者として研究開発をしてきましたが, 自分の大学院時代の先生がサポートしてくれたらなあ,と 思った場面が無数にありました. 今では,全国に 10 人ほどの著名な先生方が, 筆者の「恩師がわり」として導いてくださっています. 海外には別に 5 人ほどおられます. こうなるためには,まず会社の中で導いてくださる人と出会い, 学会活動などを通じて大学の有名な先生方と出会うという プロセスを 10 年以上続ける必要がありました. 結果的に,自分は幸せであった,と言えます. けれども,大学院時代の先生が同様のことをしてくださったら, はるかに楽だったなあと思う次第です.

"研究開発" に拘らなければ

以上の話は,あくまで「研究開発者」としての人生の話です. 他の職種で良いというのなら,ここまで苦労しません. 筆者は,学生の皆さんが「研究開発者」として企業に入るまでの サポートをして,入社後も「研究開発者」であり続ける限り, サポートができます. 当研究室には実は「村」は 2 つあって, 一つは「トライボ村」ですが,もう一つは「分子シミュレーション村」です. 後者の「村」は前者に比べると小さいです. ですが,筆者の研究室の一期生の学生はそこの住人になりました. 分子シミュレーションソフトを開発して,企業や大学における 研究開発をサポートする(単純にソフトの使い方をサポートすることも あれば,共同研究という形もあるでしょう),という仕事です. 論文を書いて,博士になることを推奨されているそうです.
願わくば,筆者は自分の育てる全員の学生にそういう立場になって欲しいです. もちろん,研究開発として入社しても,社内には生産部門や知財部門, はたまた企画部門や管理部門などもあるでしょうから, 一生,研究開発だけに専念できるかどうかは知りません. というか,企業では,研究開発をした経験を活かして,最終的には 様々な業務を活性化させるというフェーズが必要です. ものづくりに貢献してください. ですが,「最初の数歩」を研究開発で始めると, スムーズな企業技術者人生を送れると思います. それをサポートしたい,というわけです.
これほどまで学生の「研究開発」人生に拘るわけではない,大学の先生というのは 大変多いです.たとえば筆者の恩師は,留年時,卒研時,大学院と 3 人おられますが, アカデミズムでの活躍をサポートしてくれる方はいても, 企業研究者としての活動をサポートしてくれるタイプではありませんでした. メーカーにいったら,どうぞご自由に,という感じです. こういうタイプの先生というのは,別に特殊ではありませんし, 強調しておきたいのは,そういう先生は悪い先生だというわけではない,ということです. 学問を授けることが,教員として最もやらなければならないことです. 特定の分野の研究開発に拘らなくても,有名企業に入れたらそれで良い, という考え方もありえます. 大学の統計では,学生の就職先企業の名前は列記しますが, 職種までは列記しません. ひょっとしたら, こういう観点がある,ということ自体を理解していない プロパーの大学教員もいらっしゃるかもしれません.

「トライボ村」の将来性

皆さんは,これから 40 年 50 年働く方々です. 「トライボ村」は今は良いかもしれないけど,将来はダメになったりしないの? という点が心配になるかもしれません. 正直,筆者も将来のことは判りません. 昭和以降でも,繊維産業,造船産業など山谷のあった産業はあります. しかし,再度「ベアリングは産業の米」であるということを 思い出してください.織機,船のエンジンなどにも当然ベアリングは 使われてきましたし,将来,電気自動車の時代になっても 機械が動き続ける限り摩擦制御は必要です.
情報科学との関連を述べます. 情報科学の進展とともに,たとえばハードディスクの潤滑のように 新たな潤滑の問題が浮上し,トライボロジストは情報産業の 下支えする役割も担ってきました. また,設計や製造プロセスにおいてコンピュータを駆使することは 当然になりましたが,時代に応じてトライボロジストは対応してきました.
情報科学との関連でいうと,もう一つあります. コンピュータのスキルは時代とともに激変します. ガラケーのプログラマは,あっという間にスマートフォンに 対応する必要が出ました. そういった,急激な時代の流れは,意外にもトライボロジストは 感じなくても良いです. というのは,たとえば潤滑する対象が 織機からロボットアームに変わっても, 船のエンジンから風力発電機に 変わっても,潤滑の原理原則は変わらないからです.
それから,逆のことを言うようですが, 学問としては潤滑の原理原則は判ったようで判っていません. これからも,まだまだ研究しなければなりません. 「超潤滑」という現象について,我々はまだ発見もしていないし 原理もわからないし,技術的な応用も当然まだです. 要するに,これまでの「経験と勘」がまだまだ大事な分野なのです. したがって,プログラミングのように若者が圧倒的に有利という 状況はありません.ベテランのおじさんが偉そうにできるのです. これは,年をとればとるほど有難みがわかるということです.
クリックで拡大 メーカーを退職したエンジニアが, 自分の名前を冠した研究所を立ち上げて,あるいは技術士の肩書で コンサルタントをしたり学会発表したりすることは, この分野では良くあることです. この傾向は,今後数十年で大きく変わるとは思えません. なぜなら,超潤滑が発見されるか, 「天空の城ラピュタの飛行石」でも発見されない限り, 現代文明は摩擦と対峙しなければならないからです. この分野では,必ずしも 65 歳定年というわけではないのです. その意味で,トライボ村は高齢化社会にも優しいです.

「トライボ村」は皆さんハッピー

というように,トライボ村は素晴らしいとしか言いようがありません. そして, 「トライボ村」に属している大学教員は 9 割以上が,筆者と同じタイプの教員です. どこの大学であっても,ここまで書いたように, 研究開発者としての人生をサポートしてくれるタイプの先生ばかりです. 「どこの大学であっても」と,再度強調しますが, 旧帝大,一般の国公立大,私立大,高専,どこの学校であっても, トライボであれば変わりません. これは,大変重要で示唆に富んでいるポイントなので覚えておいてください. 就職先も,超大企業から町工場まで,バラエティに富んでいるので, こういう話が成立するのです. 「トライボ村」の人生は幸福で,引く手あまたなので,そうなるのです.
この稿を読んでいただいて,ひょっとして 「鷲津は凄く特殊なのではないか」と思った大学教員の方がいらっしゃるかも しれません.それは誤解で,繰り返しますが, 「トライボ村」の人生は幸福で,引く手あまたなので,そうなるのです. これが,「トライボ村」への勧誘です. この稿をお読みの方で,もし違う専門分野に行ってしまった方が いたとしても,「トライボ村」の構成企業(上の方にリンクがあります)に 入っていただいて,そこの住民に運よくなれたら, そして,導いてくださる先輩や大学教員に巡り合えたら, 同じように幸福になれます.
皆様に幸あれと願います. ⇒鷲津研究室案内






 ページのトップへ戻る