研究内容

当研究室の看板は ”材料シミュレーション” です.産業の役に立つシミュレーション技術を提供いたします.
もう少し細かく,当研究室の要素技術,着眼点は "界面の分子集団の物理化学" です. 材料の特性はバルクと表面で決まります. バルクは神が創り, 表面は悪魔が作ったというパウリの有名な言葉がありますが, それほど,物質の機能は表面の状態によって多様になります. たとえば, 我々の体はイオン性の高分子(高分子電解質溶液)から出来ていますが, 分子同士が長距離クーロン力を適切に使うことにより, 生命現象のような高度な物質・エネルギー変換が成立しています. 工業的には,潤滑や電池に関係する材料では,この表面の機能性が重要となります.
材料のシミュレーションには,電子状態レベルのものと, 原子集団レベルのものとがあります. 後者を狭義の分子シミュレーションといいますが, 我々が得意とするのは後者です. 分子シミュレーションは統計力学に基盤を置いており, また,流体力学との接点があり,別の意味で複雑であり, 計算手法の開発が終わっていません. こうした,電子~原子~流体といった階層的なシミュレーション手法の提案も, 当研究室の大きなテーマです.

ご参考:業界紙に寄稿しました

ベアリング新聞 2016 年 3 月 20 日号に 「エンジンのナノシミュレーション技術」 を寄稿させていただきました. これから分子シミュレーションで材料開発される方, とくにトライボロジー関係の方々を念頭に,「何から手をつけたら良いのか」について 書かせていただきました.また,世界有数のスパコンを用いた研究・開発・教育の メッカである当ポートアイランド南地区の現状についても後半でリポートしています. お読みいただけますと幸いです.

分子計算アルゴリズム

当研究室で発表した論文の,ほぼ全てのシミュレータは自主開発のものです. その分,開発ペースは遅いですが,個性的な研究を進めているといえます (最近はオープンソースのシミュレータなども使用しています).

分子動力学

当研究室では,有機分子,水,金属,イオン結晶, 共有結合性アモルファスなどを扱える分子動力学シミュレータを開発して参りました. MPI 並列化により,文科省次世代スパコンプロジェクトにおける大規模実証計算を 実施するなど,大規模系や高圧せん断場等特殊な環境におけるシミュレーションに 対応しております.

モンテカルロブラウン動力学

Metropolis Monte Carlo 法は, 平衡状態における分配関数を計算する手法として有名ですが, 我々は本手法が Fokker-Planck 拡散方程式の数値解法であることを示し, 非平衡系におけるブラウン運動のシミュレータとして実現しました. 溶液中のイオンや高分子の動的挙動, あるいはグラフェン・シートのすべり運動などに適用しています.

ナノ界面のイオン流動シミュレーション

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分子間力の中でも長距離クーロン力は,もっとも強く,遠くまで伝わる力です. これを利用したデバイスとして電池があり, 生体系をはじめとする高度な複雑系はイオンの力を活用しています. 一方,イオン溶液は溶媒和をはじめとするミクロな個性を有しており, 粗視化分子シミュレーションのデファクト・スタンダードはまだ存在しません. そこで我々は,イオンの長距離相互作用とともに溶媒和や流体力学的相互作用を 適切に扱う分子~連続体のシミュレーション技術を開発しています. 本手法は,軟骨の低摩擦現象や,Na系二次電池の研究などに適用しています.


トライボロジー

トライボロジーは "2つの相対する表面間におこるすべての現象の科学技術" で, 1966 年に提案された,潤滑や摩擦摩耗に関する学問の総称です. 当研究室の分子シミュレーションの大きな適用対象がトライボロジーです.

弾性流体潤滑油膜

クリックで拡大 弾性流体潤滑とは,高圧下においてオイルが硬く状態変化を起こす潤滑状態のことで, この状態を積極的に利用して動力を伝達するオイルとして, トラクション・フルードがあります. 当研究室では,トラクションの相転移や運動量移動機構を解明し, オイル作りに役立てています. また,分子レベルの計算では固体と液体の界面でスリップが生じてしまいますが, マクロの潤滑理論では非すべり境界条件が仮定されています. この矛盾について,大規模油膜計算により, 分子レベルにおいて生じるスリップがマクロ油膜において生じないことを確認し, 分子論的に説明することに成功しました.

境界潤滑

境界潤滑とは,固体の表面に潤滑分子が分子層を作り潤滑している状態です. 当研究室では,有機系単分子膜による潤滑機構や,DLC-Si (シリコン含有ダイヤモンドライクカーボン) 膜の摩擦機構モデルとして, 表面に付着した水分子潤滑機構を提案しています.

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固体潤滑

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鉛筆の芯が低摩擦である理由は,層状分子の層間の分子間力が弱いからだと言われていますが, それでは何の説明にもなっていません. 当研究室では,グラファイト移着片の運動を計算する粗視化分子シミュレータを開発し, 熱回避運動による超低摩擦機構を明らかにしました. また,固体摩擦の起源に関してフォノン散逸を表現するシミュレータによる 研究もしており,固体摩擦を総合的に研究しています.

次世代電池

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Li は,世界生産の8割がチリ国のものであり, 元素戦略の観点から Na 電池の開発が期待されています. 当研究室では,Na 二次電池用の添加剤や負極バインダーの研究を, 新しい粗視化シミュレーション技術を用いて行っております. また,シリカ系添加剤の添加による電気伝導度向上や, 高分子物性と負極バインダーの関係などについて研究しています.

高分子電解質溶液,生体分子系

長距離クーロン力が支配力である高分子電解質溶液は,生体系がそうであるように, 世の中で最も柔軟で高機能なシステムを形成します. 一方,系の相関距離が大きいこと,マルチスケール性を有していることのために, 分子シミュレーションでの取り扱いは困難でした. 当研究室では,高分子電解質溶液を扱うのに相応しいシミュレーション技術を構築し, 超低摩擦を発現する高分子電解質ブラシの挙動や, 核酸分子の周囲のイオン雰囲気の動的挙動の研究を行っています. とくに,高分子上の電荷密度が高い際に低分子の対イオンが近傍に凝縮する ”対イオン凝縮” に関連する特異な挙動について 20 年以上研究して参りました.

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交通シミュレーション

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本シミュレーション学研究科の特色として, 社会,人,自然まで含めたシミュレーション学の創造がありますが, 我々は,産業の発展により社会問題を解決するシミュレーション学を 提案したいと考えます. 近年,少子高齢化とともに過疎が問題となっています.過疎に関しては, 居住区域の選別,公共施設の集約,コミュニティバスの活用といった 選択と集中の指針が優先されがちです. しかし,江戸時代のため池開発 (兵庫県はため池数日本一) により 先人が長年にわたり拡大してきた居住領域からの撤退が, 正しい選択であるか慎重に議論する必要があります. たとえば,自動車の自動運転技術と燃費低減によって, 通勤圏を拡大することが可能となれば, 公共施設を集約しても集落を維持できると考えられます. 自動車燃費の予測計算手法を活用した社会シミュレーションにより, この問題を研究したいと思います.

技術相談について

兵庫県立大学における 受託研究・共同研究 の概要はこちら です. また,当大学 計算科学連携センター 共同研究推進部門も担当しております. 自動車の中央研究所における 10 数年間の分子シミュレーションやトライボロジーの コンサルテーション・受託研究経験を活かし, 技術相談に対応いたします. まずは,教員までご連絡ください.

教育関係のご相談

教育関係のご相談にも対応いたします. これまで,各種非常勤講師,学会の市民講座や, スーパーサイエンスハイスクールの企画などを行って参りました.

研究室に参加ご希望の皆様

大学院生や (日本学術振興会特別研究員など) ポスドクとして研究室に参加ご希望の皆様は 研究室案内 をご一読の上, ご訪問ください.

連絡先

兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科
〒650-0047
神戸市中央区港島南町 7-1-28 計算科学センタービル 405 号室
Email: washizu(at)sim.u-hyogo.ac.jp
(セールス電話防止のため,番号はネットに記載しておりませんが, 普通に電話はお受けします. お急ぎでご不明の方は 研究科代表までお願いいたします.)





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